古の伝説
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した右素手に包まれていた。
虚空から眼前に産み出されるその怪異に、とっさにバックステップを踏んでしまった。
距離が開き、その腕の主が視界に収まる。
その色は、緑青ろくしょう。甲冑から肌に至るまでの全てにおいて、緑青色だった。
身長は才人と同程度だが、女性と思しき細い顔立ち。
その瞳に光はなく、代わりというわけではないが、こちらへとに突き出されている腕は、照り返す陽光に鈍いながらも輝いていた。
どうやら、人形の類らしい。胸像とか彫像とか言われてる部類だろうか。
「僕は魔法使いメイジだ。だから魔法で戦うのだよ。
よもや、文句はあるまいね?」
よくはねえよ。
よくはねえ、けど────ああ、忘れていたともさ!
メイジって魔法使いのことだっけなぁ!
「てめえ……」
睨む視線を物ともせず、ギーシュは余裕綽々と口上を挙げる。ポーズ付きで。
「そういえば、まだ名乗りを掲あげていなかったな。
ぼくは"青銅"。
青銅のギーシュだ。
したがって青銅の人形ゴーレム、『戦乙女ワルキューレ』がきみの相手をしよう──」
ギーシュの言葉が締めくくられると同時、『戦乙女ワルキューレ』は才人めがけて砲弾の如く突っ込んだ。
右の拳が、才人の腹に深くめり込む。
「げふっ!」
才人はその勢いを丸ごと受け取り、地面を二跳三転しながら野次馬の辺りまで吹っ飛ばされた。
息が詰まって、うまく立ち上がれない。腰から下が痺れて、欠片も力が届かない。
無理もない、青銅製の鈍器で強打されたのである。
金属バットならぬ、電柱のフルスイングみたいなもんだ。
そんなもん直撃して平然と立ち上がれるほど、人間というものは丈夫にできていない。
その才人を、ゆっくりと近寄ってきた『戦乙女』が見下ろしている。
目はただ彫ってあるだけだが、そんな雰囲気がする。
「なんだよ。もう終わりかい?」
ギーシュが、呆あきれた声でぼやいた時、野次馬をかきわけてルイズが飛び出してきた。
「ギーシュ!」
「おやルイズ。悪いね、きみの使い魔を少しお借りしているよ!」
「いい加減にして! だいたい、決闘は禁止されてるじゃないの!」
怒鳴るルイズを、ギーシュは涼しい顔で受け流す。
「禁止されているのは、貴族同士の決闘のみだよ。平民と貴族の決闘なんて、誰も禁止していない」
「そ、それは、今までそんなことなかったから……」
ルイズが言葉に詰まる。
「ルイズ? ……まさかとは思うが、きみはそこの平民が好きなの
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