些細ささいな昼下り
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・オスマン」
ミス・ロングビルは、羊皮紙を滑るように駆け抜ける羽ペンから目を逸らさずに言った。
「なんじゃ? ミス……」
「暇だからといって、私のお尻を撫でるのはやめてください」
オスマン老は口を半開きにして、宙を眺めながら声を吐きだす。
「わし、朝ごはんはもう食べたかのう」
「都合が悪くなるとボケたふりをするのもやめてください」
どこまでも冷静な声で、ミス・ロングビルが演技を両断する。
オスマン老は深く、苦悩を刻んだため息をついた。
口元が舌打ちしそうに歪んでいる辺りを見る限りでは、単なるおちゃめのようだが。
この老獪としより、あなどれねぇ。
「真実はどこにあるんじゃろうか? 考えたことはあるかね? ミス……」
「少なくともわたくしのスカートの中にはありませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください」
オスマン老は、悲しそうに顔を伏せて呟いた。
「モートソグニル」
ミス・ロングビルの机の下から、小さなハツカネズミが現れた。
オスマン老の足をのぼり、肩にちょこんと乗っかって首を傾げる。
…………この老獪としより、あなどれねぇー(棒読み)。
「気を許せる友達はお前だけじゃな、モートソグニル」
そう言ってポケットからナッツを取り出し、鼻先で振ってやるオスマン老。
ふんふん、くんくん、ぽりぽりぽり。
とナッツを齧り終えたネズミは、催促するように一声鳴いた。
「そうかそうか、もっと欲しいか。よろしい、くれてやろう。
ただし、その前に報告じゃよ。モートソグニル」
ちゅう、ちゅうちゅ。ちゅ? ちゅう〜。
時たま身振り手振りを交えながら、なにやらオスマン老に囁ささやくというか鳴き掛けるネズミ。
ちょっとかわいい。
「そうか、白か。純白か。うむ、褒めてつかわす。
しかし、ミス・ロングビルは黒に限る。そうは思わんかね、可愛いモートソグニルや」
ちゅッ、と片手を挙げて応えるハツカネズミ(♀)。
何をやらせてるんだろう、この爺さまは。
なお、純白と声に出した辺りでミス・ロングビルの眉はとっくに臨界まで跳ね上がっている。
「オールド・オスマン」
冷静を通り越して鋭利に至った声が放たれた。
まったくオスマン老は動じていないが。豪胆なことである。
「なんじゃね?」
「今度やったら、王室に報告します」
「カーーッ! 王室が怖くて魔法学院長が務まるかーッ!」
オスマン老は目を剥いて怒鳴
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