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fate/vacant zero
些細ささいな昼下り
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覧できる一般の本棚には、彼の探している書物は見つからなかった。

 だが、この『干草フェニアの図書群』に探索の範囲を移して既に三時間。

 普通に手の届く範囲の本は尽く探しつくしたが、未だに彼の探す本は見つかっていない。

 『浮遊レビテーション』の呪文を使い、高い書架の書物を探り始めてからも、そろそろ一時間が経つ。

 この長時間の『浮遊レビテーション』は、壮年になってなお衰えぬ知的好奇心のみによって制御を維持されているようだ。



 彼は元来、才人と同じ人種であった。退く事を嫌い、恩義を忘れることはなく、なによりも"興味"にひたすら弱かった。

 二十年前のとある事件により、退く事を無用に厭わぬ程度には丸くなったものの、彼の"興味"だけはなんら変わることなく在り続けた。



 そんな彼のあくなき好奇心は、どうやら労働に見合った報酬を探り当てたようだ。

 彼の眼は今、一冊の本に向けられている。それは、ハルケギニア原初の時代の古書。

 始祖ブリミルの従えし使い魔たち、及びかの時代の主立った英雄たちについて記された、貴重な文献である。

 その内に記されたとあるわずか一節のルーンに、彼は目を奪われた。


 これだ。


 間違いない。あの日、機関部隊を任せられた日に自分が見せられたものだ。

 そう、そのルーンには紛れも無い憶えがあった。

 あの日の記憶も然り。そして――



「――やはり!」

 一節のルーンと、昨日ミス・ヴァリエールが召喚した少年の、左手に現れたルーンのスケッチを見比べた"炎蛇"は快哉を叫んだ。


 うっかり『中浮遊レビテーション』の制御を忘れるほどに、興奮しつつ。

 慌てて本を抱え、制御を取り戻してギリギリ軟着陸した彼は、落下の勢いのままに図書館の出口へと走り出した。


 途中、怒りを顕あらわにした司書の女性に呼び止められたが、そのままの速さで軽く謝りその場を後にする。

 後ろから更なる怒声が飛んできたが、今はそれどころではない。

 図書室を飛び出し、勢いをそのままに本塔を駆け上がりだす。


 この学院最高の賢者の、意見を仰ぐために。











 学院長室は、学院本塔の最上階に構えられている。

 その主。このトリステイン魔法学院の長おさを務めるオスマン老は、白い口ひげと髪を揺らし、重厚なつくりのセコイアのテーブルに肘をつき……、わりと必死に、退屈を噛み殺していた。


 ぼんやりと鼻毛を抜いたり、宙空を眺めたりしてみたものの、時間は相変わらず怠惰に流れている。

 余りにも暇すぎて、一分を五分くらいに感じているようだ。


 だんだんと
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