些細ささいな昼下り
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ちを掛けるように、モンモランシーというらしい少女が口を開いた。
「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」
やっぱりて。そんな分かりやすかったのか、コイツは。
「お願いだよ、モンモランシー。
咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りで歪ませないでくれ。僕まで悲しくなるじゃないか!」
相変わらずキザったらしい言い方で言い訳をするギーシュ。
お前ほんとに謝る気あんのかととてもツッコみたい。
モンモランシーはというと、テーブルの上に手を伸ばしていた。
その細っこい手がつかんだ物は……、ん?
ワインボトル(栓つき)?
コルクが宙に弾け飛んだ。
綺麗な放物線を描いて。
そのコルクが、遠く食堂入り口に落ちた頃。
ギーシュは、頭からつま先まで、ワインにぐっしょりと侵されていた。
アルコールのきつい匂いをばらまくギーシュを尻目に、モンモランシーは「うそつき!」と怒鳴り、渾身の平手を打ちつけて立ち去っていった。
出際、飛ばしたコルクを踏み砕きながら。
沈黙が痛いぞ。
食堂中の視線を一身に浴びているギーシュは、ハンカチを取り出すと、ゆっくり顔をぬぐう。
そして、髪を振りながら、ワインのしずくを飛ばしつつ、芝居がかった仕草で一言。
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
一生やってろ、バカ。
なんだか固まってカタカタと震えているシエスタから、銀のトレイを受け取る。
「待ちたまえ」
そのまま歩き出そうとしたら、バカに呼び止められた。
「なんだよ?」
そのバカ=ギーシュは、椅子の上で体を回すと、すさっ! と足を組んだ。
……頭痛がしてきたんだけど、帰っていいか? 俺。
や、帰れねえけど。部屋にな、部屋に。
「君が軽率に香水の小瓶を拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。
どうしてくれるんだね?」
なんぞとのたまってくるギーシュ。
まあ、二股掛けられてた方には確かに悪いことしちまったかもしれんけどな。
「知るか。お前が二股掛けてたんだから、お前がなんとかしろよ」
さっきギーシュを囃し立てていた友人たちが、どっと沸いた。
「その通りだ、ギーシュ! お前が悪い!」
ギーシュの顔に、さっと赤みが奔った。
「いいかい、給仕くん。
ぼくはきみが香水の小瓶をテーブルに置いたとき、知らないフリをし
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