些細ささいな昼下り
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け取らない。一歩を下がって、手の届かない辺りへ動く。
そうして、学友たちの目線の高さに掲げた香水は、とても注目しやすいものとなった。
「おや? それは……、もしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」
誰かの一声で、油に火がついたように友人たちが一斉に騒ぎ出した。
どうやら彼らは、それの出所に気付いたらしい。
ギーシュの顔が、見る見るうちに苦渋に歪んでいく。
若干、青ざめてもいるように見えた
「ああ! その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分専用に調合している香水だぞ!」
「そいつがギーシュ、お前のポケットから出てきたってことは……、つまりお前は今、モンモランシーと付き合っている! そうだな?」
「違う。いいかね? 彼女の名誉のために言っておくが……」
ギーシュが反論をしようとした時、背後のテーブルで茶色のマントの少女ががたりと立ち上がり、こっちに向かってコツコツと歩いてきた。
栗色の髪をした、可愛い少女だった。
あのテーブルは……、一年生のだったよな?
「ギーシュさま……やはり、ミス・モンモランシと……」
ギーシュの前で立ちどまった彼女は、ぽろぽろと泣き始めた。
一気に青みが増したギーシュは、かなり慌てた様子で言い訳を始めた。
「彼らは誤解しているんだ、ケティ。
いいかい、ぼくの心の中に住んでいるのは、きみだけ……」
そこまで言ったところで、ケティと呼ばれた少女の大きく振りぬかれた右手に頬を張り飛ばされるギーシュ。
ふらりと、軽くよろめいた。
「その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証拠ですわ! さようなら!」
そのまま食堂から駆け出していくケティを眺めながらギーシュが頬をさすっていると、遠くの方で再びがたりと音がした。
音のした方、っていうか後ろを振り返ると、一人の見事な巻き毛の女の子がかつかつとこちらへ向かって歩いてくる。
……あれ?
どっかで見たことがあったような気がする……、いつだっけ?
彼女が目の前にまで近寄って来たとき、ようやく思い出した。
確か、こっちに呼び出された時にルイズと口喧嘩してた子か。
このいかめしく釣り上がった顔には確かに覚えがあった。
「モンモランシー、誤解だ。
彼女とはただ、一緒にラ・ロシェールの森まで遠乗りをしただけで……」
最早青を通り越して白くなりながらも首を振り、努めて冷静げに言うギーシュ。
が、努めても冷静に思えるのは雰囲気だけで、額からは冷や汗がだらだらと伝いだしている。
さらに追い討
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