ゼロのルイズ
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「あったかいぞ。ってか、燃え移ったりしないのか、これ?」
いくらか落ち着きを取り戻した才人が、火蜥蜴サラマンダーと睨めっこしながら尋ねる。
「ええ、火蜥蜴サラマンダーの取り入れた外気マナを体内で燃焼させてるだけですもの。
尻尾の先で燃えているのは外気マナの火ですのよ」
まな。外気マナか。
……外気マナってなんだ。
ファンタジーに踏み込んだばっかりの俺にはよくわからんぞ。
「ほんとに、火蜥蜴サラマンダーなのね……」
「そうよー、火蜥蜴サラマンダーよー。
見て、この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎を出す尻尾なんて、間違いなく火竜山脈の火蜥蜴サラマンダーよ?
ブランドものよー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよー?」
「そりゃよかったわね……」
苦々しさの抽出ドリップされた声でルイズが言った。
「素敵でしょ。あたしの属性ぴったり」
「あんた『火』属性だもんね」
「ええ。微熱のキュルケですもの。
ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。
あなたと違ってね?」
キュルケは得意げに胸を張った。たわわな果実が跳ね揺れる。
ルイズも負けじと張り返すが、哀れなるかな、傍目から見ずともそのボリューム差は歴然としていた。
それでもルイズは、ぐっとキュルケを睨みつけた。
どうやら、かなりの負けず嫌いのようだ。
「あんたみたいにいちいち色気振りまくほど、暇じゃないだけよ」
キュルケはにっこりと笑みを浮かべる。
余裕の態度だった。どうみても、勝者の笑みだった。
少しの間、気まずい沈黙が流れ……、キュルケの興味は、才人に戻ってきた。
「あなた、お名前は?」
「平賀才人」
「ヒラガ・サイト? ヘンな名前ね」
「やかましいわ」
「おっほっほ! じゃあ、お先に失礼、ルイズ、サイト」
そう言って炎のような赤髪をかきあげ、颯爽さっそうとキュルケは去っていった。
未だに足元でぐるぐるやっていた火蜥蜴サラマンダーも、慌ててちょこちょこと後を追っていく。
……デカイ図体のわりに仕草が妙に可愛らしいよなぁ。
昨日のドラゴンといい、さっきのトカゲといい。
そんな他愛も無いことを考えながらキュルケを見送っていると、隣のルイズが拳を握りしめていきなりヒスった。
「くやしー! なんなのあの女! 自分が火竜山脈の火蜥蜴サラマンダーを召喚したからって! あーもー!」
「いいじゃねえかよ。使い魔なんかなんだって」
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