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fate/vacant zero
ゼロのルイズ
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どこだここ。



 日差しに直撃されて目を覚ました才人は、まずそう思った。


 まだ頭が少しぼーっとしている。起きて十秒ぐらいはいつもこんな調子だ。

 体を起こすと、頭からさらりと布が落ちる。

 反射的にそれを掴んだと時を同じくして、ようやく脳みそが体に追いついた。


 何を掴んだんだ、と手の中を見てみる。


 昨日ルイズが脱ぎ捨てていたキャミソールだった。

 わずかなフリーズの後、あぁ、異世界に来たんだっけ、と気を取り直す。

 取り直した先もフリーズするような内容だが、気にしたら負けだろうきっと。


 手からキャミソールを滑り落とし、それの持ち主の居る方へ目をやる。


 主ルイズは、ベッドの中で寝息を立てていた。意外とあどけない寝顔である。

 こうしてみると、自分より幾分か年下であるようにも見える。

 喋ると貴族だ平民だとやかましいのに、眠っている分には可愛いあたり反則ではなかろうか。


 そのまま一生寝てればいいのに、と才人は思った。



 そこまで考えたところで、がっくりと才人の肩が落ちた。

 やはり、昨日のうっかりは夢ではなかったらしい。


 これから当分の間はこの世界での生活を余儀なくされるのだ。

 この気位の無駄に高い主人の許で。


 朝っぱらからとても陰鬱な気分になったとて、バチは当たるまい。





 とはいえ……、なかなかに清々しい朝である。


 気分は陰鬱でも、窓の隙間から差し込む日差しはとても柔らかく暖かい。

 異世界でも、こういうところは変わらないらしい。



 才人はのっそり窓に近寄ると、おもむろに押し開いて──思わず感嘆を溢こぼした。

 ふわり、と陽気をはらんだ風が、頬を撫でる。

 ちと涼しすぎるが、それがまた実に心地よい。それこそ思わず叫びだしたくなるくらいに。

 眼下では昨日見た草原や森が、金色に煌きらめいていた。


 たとえ異世界でも、というか異世界だからこそ朝っぱらから、才人の好奇心は絶好調だ。

 観光じみた気分になった才人は、息を大きく吸って、



「ん……、ぅん……?」



 寝ぼけた声が聞こえて、そのまま身動きと横隔膜がピタリと麻痺した。

 どうも彼、この部屋の主のことも意識下からすっとばしていたらしい。好奇心恐るべし。

 じわりと風を背の方に追いやっていくと、主人の少女の寝ぼけ眼まなことかっちり視線が交差した。





「……はえ?       だ、誰よあんた!」


 ルイズは寝ぼけた声のまま怒鳴った。

 顔なんかふにゃふにゃに崩れている。


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