五話 彷徨う自分/ワンダーハット@
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で斬り捨てました(なんか怯えながら襲ってきたが)』なのだが、わざわざそんな理由を説明することはないし、嘘も言ってない。
実際、付近の村には感謝されたし。
「ふむ、…………だがにわかには信じられん。本当に一人で倒したのかね?」
なんか御付きの人が嘘つきよばわり?したので、ちょっとした大道芸を行う。
胸元から取り出した鉄板(投擲用)を軽く宙に投げる。
そして、そっと真ん中を手刀で『なぞった』
キンッ
涼しげな音と共に、板は半分に『斬れた』
それに驚愕する御付きの人を他所に、玄人は続けた。
「自分が仕舞った『剣』を抜けば、もう少し『派手な手品』をお見せできますが、見ますか?」と。
一応権力者の前だ。剣を預かると言ってきたので、『剣士は剣が命だから』という理由で渡さずにマジックアイテムの中に入れておいたが。
別に望むなら、『解体ショー』でも見せても良い。
あくまで主導権をパナソレイ側に譲ったまま、玄人は再度、問うた。
「このような稚拙な技で恐縮ですが、まだ何かおみせしますか?」
パナソレイは静かに首を振った。
一礼し、宿に(ついでに下にいるクレマンティーヌを拾って)戻る玄人を屋敷の上階から眺めながら、パナソレイはそっと、側近に耳打ちした。
「クロウトへドラゴンの討伐の賞金を渡すのと、クラスの引き上げを至急行うよう、組合長に働きかけろ。絶対に他国に逃がすな」
先程とはうって変わって鋭くなったパナソレイの言葉に、側近達はただ頷き一つで応え、動き出した。
「英雄か…………この王国に益をもたらすものであれば良いのだが」
『手が鉄板を両断するのを』残像でしか認識出来なかった先程を思いだし、冷や汗をかきながら、彼はそう、呟いた。
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