五話 彷徨う自分/ワンダーハット@
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受け止めた双剣ごと、後ろに下がるワンダーハットを、しかし玄人は『逃がさない』
凄まじい勢いで、滑るように下がるワンダーハット
その動きに、玄人は『合わせた』
縦に広げた両足で、地面を蹴りあげるように踏みしめ、直進。
胸の辺りに掲げた盾を、つき出しながら自分自身も突っ込んだのである。
突き進む自分。
下がるワンダーハット。
10メートル近く、元の位置から移動しているのにも関わらず、密着状態が変わらない両者。
だが、ここで、玄人が動いた。
鈍い金属音が、ワンダーハットの頭上で響く。
玄人が、受け止められた剣を、手前下に回すように『流し斬り』そのまま捻り込むように手元に戻したのだ。
密着状態のまま、睨み合う両者。
そして玄人は…………
「…………んんぅ、玄人ぉ。ちょっと痛いわ」
耳元で囁くような甘い声に、玄人は覚醒する。
半分寝ぼけながら、過去の夢…………神の試練を思い出していたらしい。
無意識にまさぐっていたクレマンティーヌの乳房から手を離すと乱雑に引いた毛布から体を出す。
まあ、いい。過去の夢の続きはいずれ又、思い出すだろう。
大事なことは、自分はあのくそ面倒な試練を経て、強くなり、そして…………
朝焼けに照らされた空に、悠然と飛ぶ、大振りな鳥。
その鳥が現実世界でいう、【ニワトリ】に近い味の鳥と脳が理解した瞬間、彼は呟くように【武技】の名を呼んだ。
【急所突き】
言葉と共に、指輪を変じたナイフが、吸い込まれるように、鳥の首もとまで飛び、突き刺さる。
同時に、玄人が指を鳴らす。
すると、どういう手品か、ナイフが鳥に刺さったまま、手元に引き寄せられた。
(まあ、先程の技はともかく、引き寄せたのはただのアイテム効果だがね。)
だが、やはり便利だ。
ニワトリもどき?を持った手の感触を確かめながら、改めて玄人は独りごちる。
『この世界特有の戦士の技』
【武技】
この世界特有のスキルにして、神の試練を越えた【戦士】クラスである玄人に渡された【スキル】
その有用性を再確認しながら、玄人は胸元を毛布で隠しながら眼を擦るクレマンティーヌに、笑顔で答えた。
「朝飯にするか!この鶏で!」
事切れた鳥を片手に。
…………流石にちょっと引かれた(涙)
それからの帰り道は別に特筆することはない。
前日に切り飛ばしたドレイク?と呼ばれる竜を『ぶつ切り』にした後、適当に一晩血抜きしたものを大きな板に木製の車輪と引く紐をつけた荷車で、町まで戻っただけである。
「なー、クレマンティーヌ?」
「なーにー玄人?」
遠目に町が見える所まで来て、ふと疑問に思ったことを彼女
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