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ある晴れた日に
190部分:さくらんぼの二重唱その八
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さくらんぼの二重唱その八

「秋山登さん?」
「また随分と古いな」
「っていっても杉下さんよりまだ年代後だけれどね」
 とはいっても古いことには変わらない。
「まあ俺達だとな」
「そうだな」
 野本と佐々がここで自分達にも当てはめてみる。
「バッキーとか」
「伝説のあの十一番」
 阪神でそれが誰なのかは言うまでもない。
「そういった感じか?」
「小山さんとかな」
「そっちもかなり古いじゃない」
 咲が彼等に突っ込みを入れる。
「せめてバースとかじゃないの?バッターだけれど」
「あの人も伝説だけれどな」
「しかも永遠のな」
 多くの阪神ファンにとっては今だにそうなのである。
「まあそれでもピッチャーならな」
「戦前だとどうなるんだろうな」
 阪神の歴史は長いのだ。
「まあとにかく背番号十一」
「この人のサイン欲しいよな」
「全くだ」
「咲は二十一番ね」
 咲も咲で物凄い人を話に出した。
「南海時代よね」
「柳本、またそりゃ」
「随分と凄い人出すな」
「大好きだったのよ」
 咲の声が懐かしむものになっていた。
「九州に移った時の最初の監督でね」
「それで大阪の時の最後の監督か」
「南海時代のな」
 考えてみるとかなりの縁がある人である。
「で、その人のサインか」
「凄い価値あるよな」
「ホークスの選手のサインだってかなり持ってるわよ」
 咲の声が誇らしげなものになった。
「監督だってね。持ってるし」
「っていうとあれか?」
「王さんのも」
「勿論よ」
 声はさらに誇らしげになって腰に両手を当てて威張っているかのようなポーズにさえなっている。自慢しているのは明らかであった。
「持ってるわよ」
「すげえな、そりゃまた」
「元々巨人の人だけれどな」
「何言ってるのよ、ホークスの王さんよ」
 咲はここで力説した。
「巨人には怨みこそあれどね」
「怨みね」
「工藤に小久保」
 個人名をさらに出してきた。
「絶対に忘れないから」
「おう、そうだよ」
「そうよね」
 これに賛成してきたのは春華と茜だった。
「こっちだってよ。ペタジーニとかラミレスとかな」
「小笠原もね」
「そういえばうちもクルーンが」
「清原もだったわね」
 巨人を嫌っている人間は多い。春華や茜、明日夢や恵美はその代表だった。
「とにかく。巨人の強奪は忘れないわよ」
 咲は言うのだった。
「だから王さんは」
「ホークスの人なんだな」
「そういうこと。咲にとっては理想の方よ」
 こうまで言い切った。
「もうね。一生添い遂げたいか」
「慶彦さんは?」
 今の言葉に静華がさりげなく突っ込みを入れる。
「あんなにベタベタしてるのに、いつも」
「慶彦さんは一生の伴侶よ」
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