第三十六話 越後の次男その十四
[8]前話 [2]次話
「その様に」
「そこまで思われていますか」
「そうです、わたくしが越後を兄上の剣として正し」
ここでも兄を立てるのだった。
「そしてです」
「お二人方がですね」
「それぞれの国を治められ」
「そこからですか」
「わたくしに力を貸して頂ければ」
そうなればというのだ。
「これ程素晴らしきことはありません」
「必ずや天下を」
「定めてくれるお力になってくれます」
「左様ですか」
「そうか、お主はそこかで考えておるか」
これまで黙っていた晴景も言ってきた。
「天下を見ておるか」
「はい、天下の戦乱をです」
「収めたいとじゃな」
「思っていまして」
「その二人の御仁もか」
「是非にとです」
まさにというのだ。
「思っております」
「そうであるか」
「必ずです」
まさにというのだ。
「あの方々のお力が必要です」
「天下を定める為にはか」
「まさに」
「成程な」
「そしてです」
景虎はさらに話した。
「やがて我等は上洛し」
「都でか」
「公方様をお助し」
そうしていうのだ。
「天下の秩序を取り戻すべきと考えております」
「幕府をか」
「是非盛り立て」
今はもう力がない幕府をというのだ。
「そのうえで」
「では当家は」
「いえ、当家は格が低いです」
それでと言うのだった。
「とてもです」
「幕府の政治はか」
「出来ぬので」
だからだというのだ。
「幕府の要職となりますと」
「務まらぬか」
「そう思っています」
こうも言うのだった。
「そこは遠慮すべきかと」
「そうであるか」
「わたくしとしては」
「成程のう」
「どうしてもです」
そこはというのだ。
「無理があるかと」
「わかった、格はな」
「そこは弁えるべきです」
こう考えるのが景虎だったし実際に言うのだった。
「わたくしとしては甲斐の守護であられる武田殿がです」
「第一であられるべきか」
「当家も織田家も守護代の家ですから」
「武田殿を立てるのじゃな」
「それが筋と存じます」
「そうか、お主がそう考えるのならな」
晴景は弟に静かに答えた。
「その様にな」
「それでは」
「天下のことも考えていくのだ」
弟にこうも述べた。
「よいな」
「それでは」
景虎は兄に確かな声で応えた、その声は兄とは正反対に強いものだった。そこにもう何もかもが出ていたが今の景虎は知る由もなかった。
第三十六話 完
2019・2・2
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ