SS7 オオカミは甘味を食べる
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世界を盾にこちらに来るよう説得すればいいだけじゃないか。
喰らうのは…、最後の手段だ。
なのに…、なんだろう? この気持ちは。哀れみ? かずみをミチルと混同してかつての幸せな日々を取り戻そうと必死な彼女達に同情?
ならば、捨てられ、殺された自分はなんだ!? かずみになれなかった自分は!?
「何のために…、俺は生き返った?」
カズは、一人で歩道を歩いてた。
頭には、犬耳のフードを深く被り顔ができる限り見えないようにしていた。
そして、ふと立ち止まる。
バケツパフェ。
レストランの外に置かれたメニューにそんな名前が書かれていた。
口の中には最近味わった魔女の鉄の味が広がっている。
甘味が欲しい。
そう思ったので、レストランに入ることにした。
「いらっしゃーい。っ?」
「?」
「あ、すみません。どうぞ、お席へ。」
シェフらしき、男性がカズの顔を見て驚いた顔をしていたが、すぐに接客態度を取り、席へと案内してくれた。
注文し、やがてバケツパフェが運ばれてきた。
綺麗なバケツに盛られたパフェに、沈んでいた気持ちが浮き上がる。
一口食べれば……。
途端、あいりのものと思われる記憶が脳裏を過ぎった。
ユウリとあいりが約束し合ったこと。コンクールが終わったら、一緒にバケツパフェを食べに行こう。その約束。二度と果たされることのない約束。
「お客さん?」
「っ…すみません。美味しくって。」
気がつけば、涙がこぼれ落ちていて、シェフに心配された。
「美味しいですね。…本当に。」
「ありがとうございます。……あの、つかぬ事をお聞きしますが…。」
「?」
「私の知人の女の子にそっくりですね。ご兄妹ですか? かずみという女の子なんですが。」
「あ…。」
しまったとカズは思った。
「いえ…。兄弟は、みんな…。」
嘘ではない。かずみ以外は……、もう…。
「そうでしたか…。申し訳ありませんでした。」
「そんなに、似ていますか?」
「ええ。もし兄弟だと言われれば信じてしまうほどですね。」
カズは、自分の体を見た。
かずみがもし男だったらという骨格も男性よりで、オオカミの魔獣となったことで、少々筋肉質になってはいる。顔立ちは、かずみそっくりの顔だが、体格が違うので見間違えることはないだろう。
「ごちそうさま。美味しかったです。」
そう言って立ち上がり、お家計を済ませたときだった。
カンナから、無事にニコとすり替わることができたという報告がコネクトを通じて伝わってきた。
いよいよか…。
レストランを出て、カズは、一瞬のうちにビルの上へと飛
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