ホワイトグリント撃破(前)
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。何の為に戦うのか』
ストレイドの動きが完全に停止する。今の彼にとってそれは一番聞きたくない言葉だった。多少意味は違うかもしれないが、彼女はこう言ったのだ。
──貴方に戦う理由などないのでしょう?
と。
「……」
それに呼応するかのようにホワイトグリントの蒼い複眼がストレイドを、首輪付きを見つめる。
「……よく言うよ」
それだけを呟くと、彼は何かを振り払うように戦闘機動を再開した。
「俺は戦う理由を持てるほど贅沢じゃない」
『……』
末期的様相を見せるこの荒廃しきった大地で、戦うのに理由を求める余裕を持った人間など数えるくらいしか存在していない。理由を捨ててしまった人間だけではなく、そもそも理由を持たない人間も数え切れない位にいた。
「第一、理由があったから勝てる訳じゃない」
そんなことは彼女が一番理解しているはずだ。コロニーを救うという思想で戦いを始めてリンクス戦争の引き金を引き、世界と共に"アナトリア"を滅ぼした"ラストレイヴン"を見続けているのだから。
「言葉は不要だ」
ストレイドは再び発砲。それに反応してホワイトグリントが再び銃を構える。
『何をちんたらやっている』
と、その瞬間ステイシスのAR-O700が降り注ぎ、ホワイトグリントは回避行動に移った。
『空気にもなれんか?』
オッツダルヴァの毒舌が首輪付きの鼓膜を震わせた。それは戦場で足を止めた情けなさ過ぎる僚機に対する叱責。
「……言いたい放題な事で」
皮肉気に言い返したものの、彼もそれは当然な事であると思っていた。
『まあ仕方ない。作戦途中で戦闘を放棄する僚機は迷惑極まりないからな』
だが、彼のオペレーターは別の主張があるらしかった。表面を聞いていればランク1と同じようにたしなめている様に聞こえるが……。
『お前も苦労したことがあるだろう?』
彼女はこれ幸いと上海で報酬の6割を結果的に持ち逃げした僚機に対する毒を吐きだしていた。
「……ふっ」
普段は母や姉のような姿を見せるオペレーターの子供のような態度を体験して、彼は小さく笑いを漏らす。
──戦う理由は持っていないが、孤独に生きないで済めば十分だ
彼は一瞬前と違い、穏やかに呟く。
「そろそろ、終わらせようか」
重量過多の機体を滑らかに操り、首輪付きはホワイトグリントを確実に捉えていた。
……それから数分後、勝敗は誰の目にも明らかになりつつあった。機体損傷が未だに軽微なステイシスや余力を残しているストレイドに対して、ホワイトグリントの装甲には決して浅くない傷が刻み込まれていた。左肩に至ってはアーマーが姿勢制御用のスラスター毎吹き飛ばされている。
「援護してください。これで決める
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