第七十五話
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
違いねぇ」
あいつの足はGに追いつけるレベルだからな、と、二人で軽く笑った。阿武隈は、ただただこちらをじっと見つめているだけだった。
「……やっぱり、お前は他の男とは違うな」
と、表情を取り繕った若葉が、俺の顔を見ながら言い放った。
「お前、ちゃんと性欲あるか?ちなみに、私はしっかりある」
「とんでもねーこと聞きやがりますねおいコラ」
生まれてこの方、女の子から性欲の話をされたことなど一度もない。
しかし、性欲、性欲、性欲…………。
「…………あれ、ない」
艦娘になったばっかりの時、不慮の事故で木曾の裸姿を目撃した挙句、混浴まで果たしてしまった時は、中々込み上げてくるものがあったが、最近、女の子にそんな感情を抱いていない気がする。
…………ただ一人を除いて。
「……なぁ、お前ってまさか、『始祖』か?」
「……いや、正確には、その息子だ」
俺は若葉が『始祖』を知っていることに驚き、若葉は俺の『息子』という単語に眉をひそめた。
「親父は七宮 亮太。世界初の提督。お袋は七宮 雫。『始祖』の木曾だ」
「……なるほど、そりゃあ、お前みたいなのが産まれても不思議は無いな」
すると、さっきまで身構えていた若葉が、すっと構えを解いた。
「お前が、他のみんなに無害だと認めよう。無礼を許してくれ」
と、頭を下げる様子は無かったが、口では謝罪の言葉を口にしていた。
「別にいいが……それは『俺』だからか?」
「ああ。お前という特殊な存在だからだ」
「……そうか」
俺だけの力で認められた訳じゃないのは、どことなく悔しく感じてしまう。しかし、話ができるようになるだけありがたいと思おう。
「ただし、調子に乗るなよ?もしお前が手を出そうものなら、その両腕を切り落としてやるからな」
――そのセリフを聞いた瞬間、俺の頭の中にはとある人物が浮かんでいた。不器用ながらに他のみんなを守ろうとするその姿は、『魔神』のそれと同じだった。
「安心しろ。俺だって、他の奴らを守るために、自分でこの腕を落としたんだ」
「……そうか。じゃあ、私は逃げる」
俺の言葉を聞いた若葉は、廊下の窓をガラッと開けると、二階に向かって窓枠を蹴った。
一瞬にして姿を消した若葉を見送ると、遠くから誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
「ぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽーい!!」
……ついでに、こんな声も聞こえてきた。
「木曾ー!!若葉二階行った!?」
俺の前で急ブレーキして止まった夕立は、分かりきっているかのように、俺に確認
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ