地獄の始まりだよ士郎くん!
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が四方八方から走る男を切り刻む。
だが堅い。その総身に纏う衣服、紅い外套が男を鎧う甲冑となっている。強化魔術の練度が楔として打ち込まれている霊基に後押しされていた。『防弾加工』とでも呼ぶべきそれは、刃すらも通さない。しかし全身を金属の棍棒で殴打されるに等しい衝撃は徹る。それにはただ、頑強な筋骨と意思の力で堪えるのみ。
己へと一直線に突き進む男の姿にペンテシレイアは獰猛な笑みを浮かべる。肉食獣の笑みだ。好き男だと嗤う、蹂躙し甲斐のある男だと。刃の洗礼を浴び、嬲られる男は走る。幾ら堅くとも無限の護りなどあるはずもなく、やがて刃が男の守りを砕き、総身を徐々に切り裂いていった。
斬撃の雨に晒され続ける鋼の男。全身に斬られていない箇所などない。しかし己だけを見る男の直向きさに戦闘女王は昂った。よかろう、相手をしてやる――それは油断か。いいや、ペンテシレイアはそれを『余裕』と言うだろう。
―― 二歩無間 ――
「下がれ、お前達」
ペンテシレイアは少数のアマゾネスの女戦士達を退かせる。親衛隊のような戦士らだ。
陣内に空白が生まれる。ペンテシレイアと白髪の男を結ぶ道に、空洞が。それは女王が蛮勇の勇者を迎え撃つ為の場である。手ずから討つに値する戦士を殺すのだ。
男は怯まない。女王は余裕を示す。
その男が何をして来ようと対処できる自信がペンテシレイアにはあった。防禦を固めようとその上から潰してしまえる、何を出されても粉砕してしまえる。
「私が直々に殺してやる。褒美だ。芥のように潰してやろう」
「――」
返答は陰剣、白の銃剣の投擲だった。己の首を狙う軌道。ペンテシレイアはそれを叩き落とそうとするも、陽剣、黒の銃剣より撃ち放たれた銃弾に阻止される。手甲に備えた鉄爪で軽々と切り落とすも、ペンテシレイアは白の銃剣を叩き落とす間を逸する。しかし躱すのは容易い。
首を横に傾けるだけで躱し、白の銃剣は背後へ飛んでいった。発火炎を瞬かせ銃撃しながら接近してくる男を、ペンテシレイアは一撃で殺さんと鉄球のついた鎖を手繰り――背後から襲い掛かってくる白の銃剣に、感覚だけで気づき剣を抜いた。
振り向きもせず剣を背後に振るい、白の銃剣を叩き落とす。ペンテシレイアは嗤った。小賢しいと。
―― 三歩絶刀 ――
――女王の不覚は、男を侮った事ではない。
蛮勇の徒と見誤った事。眼帯の男、衛宮士郎は勝算無き戦いにも怖じず、躊躇なく飛び込む精神性を持つが、その本領は冷酷なまでの戦運びにあるのだ。
故にそれは必然。ペンテシレイアは突如として真横に跳んだ男に眉を顰め。
「――無明三段突き」
眼前に突如として現れた剣者の姿に、驚愕も露に眼を
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