地獄の始まりだよ士郎くん!
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ない。
子供の頃は、弱い者苛めを見過ごせなかった。少し大きくなってからは意地を張った。多くの現実に直面してからは、理不尽なものに負けたくなくて道理を蹴っ飛ばした。
見捨てられない。諦められない。負けたくない――つまるところその男は、底無しに馬鹿で負けず嫌いだったのだ。
大の為に小を切り捨てる。
そんな賢しらげな計算など糞食らえ。助けたいと思って始めたのだ。なのに小を切り捨てるなんて、そんなのは負けを認めたようなものだろう。現実という理不尽に膝を屈したようなものだ。
ふざけるなと吼えた。啖呵を切った。見捨てたくないからやるのだ、諦めたくないから救う、負けたくないから認めない。それだけだ。それだけでいいのだ。自分以外のモノが原因で突き進んだのだとしても、己の足跡は己だけのもので、あらゆる苦悩も喜びも、己自身の生きた証だ。死にたくない、だが死なせたくもない。偽善だなんだと好きに言え、所詮は徹頭徹尾自分の為の自己満足。その道への文句だけは絶対に赦さない。
――俺は俺の目に映る者を救う。誰がなんと言おうと救う救わないは俺が決める。自己満足の自己責任だ、誰にも文句なんか言わせない。言われたとしても認めない。俺は絶対に成し遂げる。だって……そんなバカ、貫き通せたとしたら最高にカッコイイだろう?
己の言い分は無責任かもしれない。大の為に小を切り捨てるのが大人の選択だろう。だがそれでもと言い続ける。だって小を切り捨てるような事をする奴が、どうして大を救い続けられる。きっと何処かで破綻するのが目に見えていた。
無理でもなんでもいい、最初から全てを救う気概もなしに、どうして誰かを救うなんて宣える。人理を守る、なら人理に含まれる善性も悪性も、丸ごと全て救えばいい。
まずは自分、その後は手近な者、その後にもっと輪を広げていけば、いつかきっと自分の世界は平和になる。嘘でも虚飾でも構わない、だからただ己を貫くのみ。誰に後ろ指を指されようと、己自身に誇れるのなら構うものか。
だから――士郎は惑わない。風魔の忍にも誓った。これは自棄っぱちの万歳特攻などではない。
「む……」
背後より轟く銃撃音。ペンテシレイアは自身の隊の後背より、襲撃してくる者がいるのを察して振り向いた。
黒と白の双剣銃、銃口より吐き出される弾丸の霰が次々とケルト戦士を穿つ。指揮官足るアマゾネスの女王ペンテシレイアは眉を顰めた。人間? それも『単騎』だと?
襲撃者は衛宮士郎。その名を知らないペンテシレイアは、侮蔑も露に吐き捨てた。
「鏖殺を前に無謀な義侠心にでも駆られたか? 怯え潜み、やり過ごしていれば死なずに済んだものを……度し難い弱者め。踏み潰されて死ね」
ペンテシレイアは大音声を張って後陣の者らに命じた。楯構え! 槍衾を立て
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