沖田さんと士郎くん!
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らしい。戦闘開始時に疲れ切り、万全のパフォーマンスを発揮できないというのが洒落にならないというのは理解しているようだ。
霊体化しろと言うタイミングと空気を逃した俺だが、勿論ただでは転ばないのが俺である。
――意外とデカい……。ば、バカな……3アルトリア分の戦闘力だと……!
「マスター? どうしたんです?」
「いや別に」
アルトリアを単位にして観測。本人がいたら刺されかねない戯れ言を胸中に溢す。
背中に押し当てられる感覚。当の本人は気づいてないか気にしてないか。仄かに甘い香りがするが俺は気にしない。しかし耳元で喋るな。
俺みたいな野郎が浅葱色の羽織を纏った女剣士を背負って歩く……絵面は間抜けだが、それで気を抜ける状況ではない。常に周囲に気を配っている。遭遇戦だけは絶対に回避しないと……ポートランドでの二の舞になる。今度も無事に逃げ切れる保障はない。いや、サーヴァントが敵にいたら逃げ切れないだろう。あれは撤退戦もこなせる小太郎がいたから、なんとか命を繋げたのだ。
故に女といるからと、気を抜けるほどお気楽で頭お花畑みたいな意識は持てない。戯れ言は所詮戯れ言……それ以上でも以下でもない。背負っている沖田よりも、敵の痕跡がないかを探る方に意識は向いていた。
何時間か更に歩くと、漸く海岸が見えた。見覚えのある景色だ。ノースコースト、ロッキー山脈以西で最古の入植地。オレゴン州の最北西端の、漁師町アストリアが近い地点だ。
絶景、というよりは美景。青々とした海と山がある。岩礁が波濤の隙間から顔を出している。俺は顔を顰める。ポートランドで気絶し、小太郎がどこを通って逃げていたのか把握出来ていなかった為、どこに自分がいるのか把握できていなかったが……まさかこんな所にいたのか……。
ふわぁと感嘆する沖田を下ろすと波打ち際まで歩き、銛を投影すると服を脱ぎ始める。
「ちょっとマスター!? なんでいきなり脱ぎ始めるんですか!?」
「うるさい。釣りでもしてろ」
釣り竿を投影し沖田に投げつける。パンツ一丁で海に入って行く俺を、顔を真っ赤にして見ている沖田を無視する。
海に潜る。何かと水には縁が深い俺は泳ぎも達者だ。おのれ赤いあくま。色々あってこういう銛を使った漁も一度だけ経験があった。その時は今のように切羽詰まっていた訳ではないが……遊び感覚でやれていた。しかし、今は切実である。
素潜りで海の底を探る。意外と魚は多かったが――とりあえずいきなりは狙わず、大体の波の流れなどを把握するに留めた。二分潜った後に一度海面に出る。
沖田は困惑しながらも、ひょいっと軽く跳躍を繰り返して岩礁から岩礁に移動し、波しぶきを躱しながら沖の方の一際盛り上がった岩礁の上で、餌も何もなく釣り竿の糸をおっかなびっくり海につけてい
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