地獄門からの門出だね士郎くん!
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変えるような事はない。俺の問いに彼女は首肯した。
しとしとと降り注いでいた雨は、小太郎の苦悶を洗い流したように止んでいた。その中で、儚げな容貌の少女は首を捻る。
「はい、私はセイバーのサーヴァ、ント……? あ、あれ? セイバー……なんですが。あれー? おかしいです……なんか私、アサシンのよーな……セイバーのよーな……?」
「なんだ、召喚に何か不具合でもあったのか?」
何せ殆どインチキじみた召喚過程だった。サーヴァント召喚を、サーヴァントの霊基を元にしておこなったのだ。なんらかの不具合があっても不思議ではない。寧ろ何もない方が有り得ないだろう。
案の定沖田総司は戸惑っていた。霊基へなんらかの欠落があるのか? それとも……。その推測を裏切るように、沖田は言った。
「えっと、有り体に言いますね?」
「ああ」
「なんか私、セイバーだけどアサシンみたいなんです」
「……? それは……ダブルクラスという事か?」
「ええまあ、はい。多分そうです」
ダブルクラス。つまりは二重召喚。二つのクラス別スキルを保有する事が出来るという、極めて希少なスキルだ。
召喚者が召喚の際に、特殊な条件付けを行わなければ発動しない――らしい。制限として、三騎士及びエクストラクラスは組み合わせに入らず、残りの四クラスの組み合わせでなければならない――らしい。
らしい、というのは。冬木の聖杯について調べていた際に、ロード=エルメロイU世から聞いた覚えがあるからだ。全部受け売りである。
だが三騎士クラスとの併用は不可能であるはず。何故剣士と暗殺者のクラスが合わさった?
「マスター? 何か可笑しな事でも?」
沖田がそう訊いてくる。……知らず、笑っていたらしい。
考えられる理由は一つだけだ。本来はセイバーとして喚び出されるはずだった沖田は――小太郎という暗殺者の霊基を元に召喚された事で、本来の剣士のクラスに暗殺者としての霊基が混ざってしまったのだろう。
破損した聖杯を使い、俺という三流の魔術使いに喚ばれ、小太郎の霊基を介し、沖田という剣士のクラスが変質した。そうとしか考えられない。となるとこれはつまり――
「いや……なんでもない。お前の異常の原因は分かった。クラスはいいから、スキルと宝具の説明を頼む」
――まあ、ロマンチックに言えば。小太郎は、死んでない。そういう事だろう。そういう事にしてもいいだろう。俺はそう思っておく。
沖田は首を傾げながらも、「マスターがそう言うなら」と受け入れてくれた。
「まず、セイバーとしてのスキルですが。クラス別スキルの対魔力、騎乗スキルはEです」
「……」
「いーです」
「……」
「……」
遠くを見る。沖田も遠くを見た。
雨が上がっ
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