純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 18
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佩剣した騎士の登場で身の危険を感じたのか思いっ切り仰け反るクァイエットに、プリシラの斜め後ろで控えたベルヘンス卿はにっこりと笑って両腕を背後に回した。
白刃を振り上げるつもりは無いらしい。
「な……、なんなんだよ、お前……!?」
それでも怯えが抜けないと見て、腕を組んだままのプリシラが小さく笑みを溢す。
「彼は、アルスエルナ王国第三王子殿下付き第三騎士団団長兼、数日限定で私の護衛を務めている、ボナフィード=フルウム=ベルヘンス卿よ」
「王……っ」
「彼が居る間は、発言の仕方や内容に十分気を付けなさい? 私なら見過ごしてあげられる程度の物言いでも、彼の立場では見逃してくれないし、私の権限では彼を止められないから」
プリシラと共に孤児院を訪れたベルヘンス卿含む第三騎士団員達は、あくまでも借り物の護衛だ。彼らを動かす権利は常に主人であるヴェルディッヒ=セーウル=ド=アルスヴァリエ王子本人か、王子に対する命令権を所持している人間が保有する。
セーウル王子の従姉弟ではあっても、プリシラにその権限は与えられていない。
……表向きは。
クァイエットへの忠告は、複雑な力関係で成り立っているお家事情など知る由も無い彼への親切心でもあったのだが。
「……脅しのつもりかよ……クソが!」
知らなければ伝わらない物もある。
不法侵入後に拘束されている犯罪者の視点では、権力と暴力を併せた圧力にしか感じられなかったようだ。笑顔の後ろに剣が見えていればそれも仕方がない話。
奥歯をギリリと鳴らしながら自分達を睨み付ける青年に、プリシラとベルヘンス卿はヤレヤレと両肩を軽く持ち上げた。
「ねぇねぇ、まいく」
鋭い敵意と呆れが入り交じる空気の中、ミネットが隣に立ったマイクの服の袖を掴んでチョイチョイと引っ張る。
「ぷりしらさまの、よこながし? みねっとも、しってるの?」
プリシラが自分に嘘を吐いていたのかも知れないと不安そうな顔をするミネットだが、マイクは平然と「しってるよ」と、頷いた。
「それさ。たぶん、「けんきゅうひよう」のことだ」
「けんきゅー……?」
「びょうきとくすりの、けんきゅうひよう。ミネットもきいてただろ? オレらには「しゃかいほしょー」がないから、ふつうのびょういんじゃ、しんさつりょうがはらえないって。その代わり、こーしゃくけがきふきんをちょっとだけつかって、オレらのくすりをつくってくれてるんだよ、ってヤツ」
「な……っ!?」
「……ああ! なぁんだ、そっかぁ! よこながしって、おくすりのことだったんだね!」
マイクの説明を受けて目を剥くクァイエットと、聞き覚えがある話に喜ぶミネット。
二人の反応を見ていたプリシラが、ふふっ、と、意味ありげに含み笑う。
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