ターン7 傾国導く闇黒の影
[9/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ドは、バージェストマ・ハルキゲニア。相手モンスター1体を対象に取りその攻守をターンの間だけ半減させるこのトラップをダメージ計算時に発動すれば、ユニゾンビであの狐を返り討ちにすることもできる。
だが、彼女はそれを見送った。確かにユニゾンビをここで守ることができれば、次のターンで更なるアンデットを彼女の墓地に送ることもできる。しかしそれに待ったをかけるのが、九尾の狐の持つもうひとつの特殊能力である。破壊された時に弱小ステータスの狐トークン2体を場に残すその能力を、何らかの形で利用されることは避けられない。ゆえに彼女は、伏せカードを沈黙させたままでその攻撃を受けた。
そして、その判断を即座に後悔することになる。
九尾の狐 攻2200→ユニゾンビ 攻1300(破壊)
糸巻 LP4000→3100
「……!」
声すらも出ないほどに鮮明な、自分の腹部を直接えぐられるような痛み。暴走した痛覚がでたらめに体を刺激することでこみ上げたあまりの吐き気にその場に膝をつき、呼吸もめちゃくちゃに土下座するように両手を地面についてえづく。胃の中身をすべて吐き出さなかったのは、彼女にとって僥倖だった。
「おやおや、随分鈍ってますね。私の知っている貴女であれば、その程度のダメージに膝をつくような真似はしないと思っていたのですが。ま、おかげでいいもの見せてもらいましたよ」
「ざっけんじゃねえよ、タコ……!」
冷静な煽りがかえって彼女の闘志に油を注ぎ、燃え上がる感情が自身の苦痛をねじ伏せる。脂汗をかきながらもどうにかその両足で立ち上がった彼女に、上品に口元を手で押さえてのくすくす笑いが降りかかる。
彼は合理的だ。だが、その人格を構成する要素はそれだけではない。例えば彼はプロ時代、相手が誰であろうともその1戦のみのメタカードをデッキに仕込むような真似はしてこなかった。彼に言わせればそれは負かした相手にメタを張られたから負けたのだ、などという余計な言い訳を与えるだけの利敵行為であり、完膚なきまでに正面から捻り潰したうえで自分が弱いから負けたのだという事実を2度と消えないほど相手の心に強く刻み込む、そこに愉悦と快感を覚える彼の性癖に反していたからだ。そんな彼にしてみれば、さぞかし今の彼女は愉快な姿に見えたことだろう。
「愉快なものを見せていただいたお礼といってはなんですが、そろそろ種明かしぐらいはしてあげましょうか。どうせここで黙っていても、すぐに貴女方も知ることになる話ですからね。まずお察しの通り、私のデュエルディスクは新型です。今はまだデータ収集中の試作品ですが、見ての通りその鬱陶しい妨害電波に無効化されることなくブレイクビジョンを展開及び固定でき、さらに特筆すべき点として起動時から微弱な電波を発信することにより、その効果範囲に存在する
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ