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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン7 傾国導く闇黒の影
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を返したものの、その表情は硬い。巴の発言は、そのなにもかもが図星だったからだ。彼女があのタイミングでカナディアを巨竜の聖騎士に発動したのは、要するにたった1枚のカードを警戒しているからにすぎない。彼のエースモンスターの1体である最上級ドラゴン、闇黒の魔王ディアボロス。それはアンデットワールドにおけるドーハスーラと同じく自身の根城であるシャドウ・ディストピアにおいて最大の力を発揮し、ひとたび場に出ることを許せばかなりの苦戦を強いられることは目に見えている。そしてそのカードを特殊召喚するための条件は、「自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされた時」。
 つまり彼女がカナディアを使ったのは、巨竜の聖騎士をシャドウ・ディストピアの適用範囲から外れた裏側守備表示にすることでその属性を書き換えられた闇から本来の光へと戻す、たったそれだけの意味しかない。あるかないかすらもわからないカードに対し過大に警戒し、あげく使い勝手のいい妨害札を1枚消費した。巴は、その意図に気が付いた。本来ならばただの馬鹿げたミスとして流してもおかしくないプレイングに感じた小さな違和感を紐解き、彼女に関する彼の記憶や印象と照らし合わせたうえでその意図を見破った。そしてその上で彼は、彼女を臆病と嗤っているのだ。

「それに、だがな。アタシにだってそれなりの理屈はあるんだぜ?教えてはやらんけどな」

 表情の硬さがどうにか取れ、にんまりとその口角が持ち上がる。今度は、糸巻がふてぶてしく笑う番だった。確かに彼女のプレイングはよく言えば慎重、悪く言えば被害妄想の激しいものだったかもしれない。だが、彼女の言葉はただの負け惜しみなどではない。巴光太郎が糸巻太夫の言動をその憎しみがゆえに予見できるのと同じように、糸巻太夫にも巴光太郎の思考パターンは頭に染みついている。彼は基本的には合理的であり、しかもそれを突き詰めることに快感を感じるタイプの人間である。そんな彼が、何の躊躇もなくそのディアボロスをデッキから装備カードとして引き出せる巨竜の聖騎士を使い捨て、墓地に送ることができるおろかな埋葬を九尾の狐のために使った。つまりそれは逆説的に考えれば、その効果をディアボロスに対し使う意義が薄い状態にある……すなわちディアボロスは、すでに彼の手の内に存在するということに他ならない。これが同じ元プロでも他の相手ならば、さすがの糸巻もそんなか細い理論だけで判断を下さなかっただろう。
 しかし、彼女はこの男をよく知っていた。互いにある種の同族嫌悪めいた匂いを感じ取る彼らはどこまでも対局的であり、同時に限りなく似通った存在だったからだ。

「では、そういうことにしておきますよ。どうせ、その減らず口もそろそろ聞き納めなわけですしね。バトル、九尾の狐でユニゾンビに攻撃。九尾槍!」

 彼女のもう1枚の伏せカー
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