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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン7 傾国導く闇黒の影
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の仇花よ!融合召喚、スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」

 それは紫色の触手、ではない。何本もの植物、闇を吸い瘴気を喰らう貪欲な蔦が伸びる。太さも長さもまちまちではあるが、いずれも共通点としてその先端にはぷっくりと膨れた花の蕾がある。そしてそのうちの1つが、息をのむ糸巻の前でゆっくりと開いた。
 だがそれは間違っても真っ当な、どころかどれだけ花の定義を拡大解釈してもその範疇には引っかからないような代物だ。動物の口のように中央から2つに割れたその内側には控えめながらもびっしりと牙が生え、花弁らしきものは存在しない。辺りを見回した彼女の目に飛び込んできたのは、いつの間にか彼女の周りを取り囲んでいた他の蔦から生える蕾もまた、同じように開き始める光景。どれも最初のひとつと同じく、植物とは思えない獲物への貪欲さをむき出しにする動物的な代物。べちゃり、と湿った音がしてそちらに視線を動かすと、輪廻の陣の社を侵食するかのように這っていた「蔦」から生える「花」が「咲いた」拍子に、貪欲気に真下の石畳まで「蜜」……いや、「涎」を垂らしていたところだった。

 スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻2800 ドラゴン族→アンデット族

「スターヴ・ヴェノムは召喚成功時、相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズまで吸収する。せっかく残しておいてあげたんです、真紅眼の不屍竜にはこのまま上質の肥料となって頂きましょう」
「冗談言うなよ、輪廻の陣!このターンもアンデット族の真紅眼を除外して、アタシの受けるダメージを0にする!」

 蔦の浸食を止めて焼き尽くすかのように、決して消えない妖の炎による不知火の紋様が彼女の周囲を覆う。しかし、その代償はあまりにも大きい。確かにこれで、このターンの安全は確保されたかもしれない。だが、この次のターンはどうなるというのだろう。ウイルスカードはいまだ生きており、すべてのドローカードは巴に筒抜けとなる。彼女と共に戦うモンスターたちはすべてフィールドを離れ、もはや彼女の手元には輪廻の陣たった1枚しか残されていない。ライフはいまだ、辛うじて彼女が有利。しかしその優位性が、この状況で何の役に立つというのだろう。先ほど逆転に繋いだウイルスカードを逆手にとってのコンボも、既に残り1枚しかデッキ内に馬頭鬼の残っていない彼女に2度使うことは不可能。脈がわずかに早くなり、血流の加速が傷の痛みをぶり返す。呼吸も、普段に比べほんのわずかに浅く速い。気持ちを奮い立たせるために懐に手を伸ばし、馴染みの煙草に火をつける。
 そして舞台は再び、冒頭へと巻き戻った。巴は、目の前の女が1度は逆転してくるだろうとは読んでいた。そして事実彼女は先のターン、素引きした馬頭鬼から一時は盤面をひっくり返した。しかし彼は同時
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