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人理を守れ、エミヤさん!
地獄の門へ (下)
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いだろう。ケルトに荷担しているという事は無辜の人々を殺めている可能性は高い。これからも殺すだろう。本当なら見逃すべきではなかったが、俺は殺される訳にはいかないのだ。
 ……情けない。小太郎というサーヴァントがいるから、捨て身で人を助けなくても、長期的に見て多くを助けられる方策を探るという言い訳で、短期的に人が殺められる可能性を見過ごした。俺は汚い奴だ。……嫌悪感を抱く。

 幾日か更に歩き、オレゴン州に入った。しかし相変わらず人を見掛けない。時折り山岳部でケルトに遭遇するが、一撃離脱を繰り返してそのまま逃げ去った。
 ケルトとの遭遇率が高い。俺はこめかみを揉んだ。マズイ、下手を打った予感がする。そう思ったなら即座に行動を移すのが吉だ。

「……小太郎、進路を変えるぞ」
「え?」
「ワシントン州は敵地だ。奴らとの遭遇率が高すぎる。北は敵だらけだろう。南東に進路を移す」

 断じるように俺がそう言うと、小太郎は困ったように眉を落とした。

「しかし……主殿。主殿の食糧と水の備蓄は……」
「……」

 戦闘背嚢の中身はほぼカラだ。後一食分しかない。舌打ちした。今更進路を変えても飢えに苦しんで野垂れ死ぬかもしれない。
 武器や悪路の歩行に必要な装備は投影でなんとか出来るが、食い物関係だけはそういう訳にもいかない。こればかりは仕方がなかった。最寄りの都市があるから、そこに寄って調達してから進路を変えるしかないだろう。

 最寄りの都市とは、オレゴン州最大の都市があるポートランドだ。と言っても、今の時代にポートランドはない。オレゴンシティとバンクーバー砦の中間に位置する其処は、ウィラメット川流域に広がる空き地である。
 1843年にウィリアム・オバートンがこの地を発見し、商業都市として開発する事業に乗り出すまでは小さな集落があっただけだろう。別名が「麦酒の町」であり、俺は現代のポートランドで麦酒の醸造の仕方を勉強したものだ。
 故に都市と言うのは正確ではない。未来に都市となる場所、と言った方が正解だろう。ともあれ其処に向かった俺と小太郎は、後のポートランドである集落の惨状を目の当たりにした。

 人は既にいない。しかし夥しいまでの破壊の爪痕が残されている。家屋は倒壊し、燃えて崩れ落ちた痕跡があり、幾つものクレーターに地面が抉られている。ここでなんらかの戦闘があったのは明白だ。――それも、比較的最近に。
 風魔の頭目が顔を引き締める。

「……危険だ。深入りし過ぎた」
「はい。退きましょう。川で魚を釣るか、海岸に出て漁をするしかなさそうです」

 余りにも危険だった。まだ敵が近くに――



「おお、これはまた数奇な客人だ。折角来たというのにもうお帰りかな?」



「ッ――!」
「主殿、下がってく
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