地獄の門へ (中)
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ったぞ」
「は。しかし大した事ではありません。既に壊乱しておりましたので」
小太郎が戦域から離れ、即座に戦闘背嚢を持ってくる。それを受け取ってさっさと歩き出した。
俺はふと、小太郎に宝具の詳細を聞いた時から思っていた事を口にした。
「それにしても、お前の宝具の真名……全然和風じゃないな」
「それは言わないお約束ですよ、主殿」
祖先が何故か残してくれた故郷の言葉を、これまた何故か単語だけ残していたらしい。
よく分からない感性だ。そこさえ和風だったら完璧な忍者なんだがな、と。忍者に惹かれる所のある俺としては残念に感じた。
というより、その宝具の真名は。
「中二病、か……」
「主殿? 今何か、聞き捨てならない事を仰りませんでしたか?」
「いや別に」
思春期の年齢で現界している彼だ、相応に過敏な所がある。俺にはそんな時期はなかったから、妙に微笑ましいだけだ。
五日間歩くと、山脈に差し掛かった。ここを越えるとオレゴン州に入るだろう。
ろくな装備もなしに山岳部を歩くのは中々に難儀だ。ここに来るまでに壊滅している村落を見掛け、食料なり水なりを調達したが。やはり心許ない。生存者は見なかった。その痕跡も見当たらない。
そして、北進を続ける。斥候として先行していた小太郎が引き返してくるのを見ると、俺は嘆息する。
「……またか?」
「はい。ケルトの戦士、数は二千。敵サーヴァント一騎に率いられています。南下しているようです」
五日前に遭遇した五百の、四倍の兵力。そしてサーヴァント……。
俺は顔を顰めた。北進していくと、敵の数が増えた。よくない兆候だ。もしやワシントンかオレゴン辺りに敵の拠点があるのか? だとすれば、やり過ごした方が手間がないが……いっその事進路を変えるべきかもしれない。
いや、まだそう判断するのは早計だ。
「素通りさせましょうか」
「感知能力の高いサーヴァントだったら困る。こちらから接近しやり過ごせるならそれでいいが、無理なようなら痛撃を与えて即時逃走だ」
「承知。時間はあるので、工作を仕掛けます」
「ああ。打ち合わせ通りに頼むぞ」
「は!」
瞬、と姿を消す小太郎に俺は頷き、ポツポツと小粒の雨を降らせ始めた曇天を見上げる。
夜は近く、山岳地帯で、強い雨が降る前兆がある。やり様はあるさ、と誰にでもなく呟いた。
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