お休みなさい士郎くん
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ない。漠然とした不安を覚える。
――まさか。いや、そんな訳はない。
自分に言い聞かせる。
それよりも気にしなければならないのは、現実に直面している危機だ。
体力は戻った。魔術回路も平常に回復した。しかし隻眼のハンデはまだ克服出来ていない。そこで俺は小太郎に頼んで、彼と軽く立ち合った。勝負ではなく、単なる感覚のすり合わせだ。
包帯で左目を覆っている。病気になるのは御免だから、水や食料にも細心の注意を払っていた。後清潔にするのも基本である。
小太郎は執拗に死角から仕掛けてくる。丁寧に上段の袈裟から、下段の足払い、胴払いをします等と声に出しながら。それを干将莫耶で凌ぎながら、徐々に声掛けを無くしつつ、それに対応出来るように感覚を合わせていく。
そして、更に三日が経った。……カルデアの時計は未だに一時間も経たない。自分の状態の解析と解呪、通信の試みが日課になっていた。応答はない。異常もない。それが異常だった。
「――それにしても、主殿は僕と同郷の方だったんですね」
「なんだ今更?」
五日も同じ釜の飯を食い、何度も立ち合って、語り合ったりしていると、小太郎ともすっかり親しくなれていた。
彼とは正式に主従関係となった。パスを繋いで魔力を供給している。破損聖杯から俺に、俺から彼に魔力が流れる形ゆえに負担はない。宝具を使われるとほんの少しだけ負荷がある程度だ。
この感じだと、燃費のいいサーヴァントなら五騎、俺自身の魔力も回して無理をすれば七騎契約出来る。燃費の悪いトップサーヴァントなら二騎で、無理をして三騎だ。破損しているとはいえ流石は聖杯である。これがなければ小太郎だけで契約は限界だった。
小太郎は優秀だ。スキル、ステータス、宝具、技量、コストパフォーマンス、思想、性格。まさに理想のアサシン、もとい忍者だ。その破壊工作の技能で、一度はここに押し寄せたケルト軍の軍勢を壊滅状態にしてしまったのである。戦闘もなく、破壊工作だけで。
出会ってから五日、その日の夕方の事だった。俺の感覚の擦り合わせの手伝いを終えると、小太郎は何気なく言った。
大方の感覚の擦り合わせも終わった。恙無く左側からの攻撃にも対処できるようになれた。寧ろ以前より感覚が鋭くなっているかもしれない。
「主殿はその、日本人離れして長身ですし、肌の色や髪の色も特異ですから。衛宮士郎と名乗られた時は素直に驚きました」
「それを言ったら小太郎もな。赤毛に赤い瞳、そして白い肌。日本人離れはお互い様だろう」
「はは。この赤毛は、異国の出身の証なのでしょう。父もそうでしたから。それだけでなく……僕は他にも、試行錯誤の末に生まれた子供のようです。人のような、そうでないような、人でなしのような――そういう存在です」
「へぇ。でも小太郎は
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