第二章
[8]前話
「ですから」
「マンガ?」
「漫画があるとか」
「それでいいのかい」
「君は」
「はい、私街に出た時はいつもです」
それこそと言うのだった。
「漫画を沢山買って。ライトノベルも買ってますから」
「暇な時はか」
「その漫画読んでるからか」
「だから大丈夫なんだな」
「人里離れたところにいても」
「平気か」
「はい、私は全然平気です。秋葉原にいた時と同じです」
メイドでしかもいつも漫画もっと言えばライトノベルも読めるからだ。それでと言ってそのうえでだった。
明子は明るく働いて仕事時間が終わるといつも漫画を読んで楽しんでいた。少し叫べばエコーが返ってくる様な人里離れた場所にいてもそれでも彼女にとってはそこは秋葉原と同じであった。大好きな漫画が何時でも好きなだけ読めるだけあって。
それでだ、雇い主の久光も笑って話した。温厚で人生の多くのものを見てきたがそうしたものを穏やかに受け止めている顔だった。
「それなら好きなだけ楽しむといい」
「そうですか」
「漫画が好きならですね」
「そのことに満足しているなら」
「それで、ですか」
「わしから言うことは何もない」
こう言ってだった、そうして。
明るく働く明子を見守っていた、その明子の姿はいつも明るかった。
街は遠くでも 完
2019・4・3
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