ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
3章 穏やかな日々
30話 立ち直り
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中、ヒュッと風がリアの髪を揺らした。目の前を横切る、なびく黒髪。次の瞬間、どさっという音が部屋の中に響く。リアは驚きで目を見開いた。
そこには、キリトを組み敷き、彼の首筋に槍の切っ先を向けるツカサの姿がある。
「死にたければ今ここで、俺が殺してやるよ」
氷の刃のような言葉は、あまりにも予想を上回っていて、リアもキリトも固まっていた。
「別にお前の命はお前のものだ、死んでその罪を償うというのなら、その通りにすればいい」
無機質な漆黒のツカサの瞳に、わずかに揺れる。どこか遠い目のようにも見える。
「だがな、命で償うっていうのは、綺麗ごとであって、自分に対する自己満足でしかないんだ。そして…単なる逃げだ」
「…逃げ…?」
「ああ…死んだ先は誰にもわからない。だが、重荷を背負ったこの状況から逃れるために死ぬんだろう?違うか?」
「……」
キリトはギリッと歯を食いしばった。顎の線が盛り上がる。
「罪を償うつもりなのなら、生きろ。すべての重荷を背負って、誰かのために生きろ。それが一番の罪滅ぼしだろ」
リアは、ただ、キリトの瞳から雫が零れ落ちるのを見ていることしかできなかった。
ツカサは、ゆっくりと立ち上がると、槍を背に戻した。
ツカサとリアの視線が交じり合う。リアは、ツカサから目をそらした。
シンとした沈黙の中で、キリトの手が動いたのを、リアは横目でとらえた。メッセージでも来たのか。だが、それは一瞬止まり、そして再び動き出す。
上半身を起こしたキリトの手の中には、いつの間にか青い結晶が握られていた。
「記録、結晶…?」
リアが呟く。そう、あれは音声や写真を記録できる記録結晶だった。いったいなぜこのタイミングで…?キリトは震える手でそれをタップした。
それからあふれ出したのは、いかにも優しそうで、おっとりした少女の声だった。
恐らくキリトが生き返らせようとした少女の物だろう。キリトへ向けてのメッセージを淡々としゃべる声だけが部屋を支配していた。
キリトの嗚咽が漏れ始め、彼女が赤鼻のトナカイを歌い始めたころ、リアとツカサはそっとその場を後にした。リアには確信があった。もう、彼は大丈夫だろうと。
―?―?―?―?―?―?―?―?―?―
「ねえ、ツカサ君」
「何?」
ミュージエンの街を歩きながら、リアは小さく言った。
「キリトに言ったこと、ツカサ君が自分に言い聞かせてることだったり、する?」
ツカサは歩きつつ、視線をリアに向けた。そして、その口から発せられた言葉は…
「そうだとしたら、何?」
夜空に溶け込み
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