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戦国異伝供書
第三十五話 天下一の武士その七
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「大人しくな」
「では」
「それでよい」
 諏訪は観念した声で家臣に述べた。
「まだ主の座にいたいと思うが」
「それでもですな」
「わしは腹を切らず子は残ってじゃ」
「奥方様と暮らせるなら」
「敗れた将としては破格のことじゃ」
 こう言うのだった。
「わしだけが腹を切らされるならましじゃ」
「最悪奥方様や跡継ぎ様も含めて磔です」
「今はそうした世であるしな」
「戦国の世故に」
 家臣も言った。
「殿もまた」
「そう思うとな」
「ここは、ですな」
「それで済むならな」
「よいですな」
「破格じゃ、ここでごねても悪くなるだけじゃ」
「では武田殿のお話を受け入れて」
「わしは都に入る」
 そうすると言うのだった、こうしてだった。
 諏訪頼重は妻子と共に武田家に所縁のある公卿の屋敷に入る形で都において隠居することとなった、そして諏訪家の主は晴信の四男である四郎がなることが決まった。高遠はこのことに反発を見せたが。
 晴信が諏訪に軍勢を入れて常に留まらせるとなると黙るしかなかった、それで晴信は彼もであった。
「隠居してもらうがな」
「それに従わぬならですな」
「兵を送る」
 馬場に対して述べた。
「その様にするぞ」
「わかり申した」
「これで諏訪は手に入った」
 晴信はあらためて述べた。
「そして次は佐久に兵を進めてじゃ」
「あの地もですな」
「手に入れる、そしてな」
「さらにですな」
「小笠原家の領地に兵を進めるが」
「小笠原殿は信濃の守護ですが」
 それでもとだ、内藤は晴信に述べた。馬場も内藤も家臣達の中に控え晴信のすぐ傍には信繁が控えている。
「そこをあえてですな」
「攻める、そして後に幕府にお願いしてじゃ」
「当家が信濃の守護となりますな」
「そうなる、最早小笠原家は守護の力はないな」
「だからこその今の信濃です」
 国人達がそれぞれ分かれている、そうした状況になっているというのだ。
「まさに」
「ではじゃ」
「当家が万全に治めれば」
「それでよいからな」
「だからですな」
「次は小笠原家じゃが」
 それでもというのだ。
「まずは待て」
「政ですな」
「そうじゃ、諏訪の地もしかと治めてじゃ」
 そのうえでとだ、晴信は内藤に話した。
「豊かにするぞ」
「それは当家の領地になったからですな」
「その通りじゃ」
 晴信は信繁のその問いに即座に顔を向けて答えた。
「甲斐もそうであるがな」
「当家の領地となったならば」
「しかと治めてじゃ」
 そうしてというのだ。
「豊かにする、年貢もじゃ」
「多くは取りませぬな」
「年貢をその時多く取るよりも政をしかとしてじゃ」
「豊かになった国の富を使う」
「それが長い目で見るとよいからじゃ」

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