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ある晴れた日に
124部分:谷に走り山に走りその二十
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谷に走り山に走りその二十

「それもかなりね」
「これでかよ」
「昔は本当に凄かったから」
 こう説明するのである。
「何もしなかったから」
「何もかよ」
「遊ぶばかりでね。もうトランクスなんか半年穿きっぱなしで」
「それやると火山の噴火口みたいな匂いするんだよな」
 それをやった本人がここでまた言う。
「もう壮絶でな、この匂いが」
「手前だからか」
「道理で匂いが酷い時があると思ったら」
 中学からの坪本や佐々も知らない衝撃の事実であった。
「そんなことやってやがったのかよ」
「よりによって」
「まあ今は毎日替えてるからよ。安心してくれよ」
「当たり前だこの野郎」
「どんだけ不潔なんだよ」
「お風呂だって何ヶ月に一回だったかな」
「それ、昔のヨーロッパ!?」
 咲が真っ先に想像したのはそちらだった。
「確か昔のあそこの人達ってそんな感じだったらしいけれど」
「ああ、あそこは何年に一回かだよ」
 竹山はすぐに彼女にも答えた。
「彼より凄いけれどね」
「どんだけ不潔なんだよ、当時のヨーロッパ」
「そりゃペストも流行るわね」
「確かに」
「だからなのよ」
 皆が呆れたその絶好のタイミングでまた言ってきた江夏先生だった。こうしたタイミングを見切る絶妙さは流石であると言えた。
「清潔にしないと駄目なのよ」
「ペストにならない為ですか」
「身体が真っ黒に変色して全身が痛んで苦しみ抜いて死ぬのよ」
「うわ・・・・・・それって」
「最悪」
 流石にこうした死に方はしたくない。皆そう思わざるを得なかった。日本人には馴染みがない病気だがそれでもそう思わせるものがあった。
「わかったわね、野本君」
「わかりましたよ」
 憮然としているがそれでもペストの恐ろしさは彼も感じ取っていた。
「俺もそんな結末は嫌ですし」
「最悪君の部屋から日本中にペストなんてことも」
「先生、それは流石に」
「ないと思いますけれど」
 皆も流石にそれはないと思った。
「幾ら何でも一人の家からペストって」
「野本でもやっぱり」
「とにかく。気をつけなさい」
「わかりました」
「わかればいいわ」
 何はともあれ野本を納得させたのであった。そうした意味で今回は先生の勝ちであった。やはりペストは怖いものであった。現代においても。
「私も」
 話が一段落ついたところで未晴が思い出したように口を開いてきた。
「帰ったら部屋のお掃除しないと」
「部屋のって?」
「いつもしてるのよ」
 こう恵美に答えるのだった。
「時間があれば毎日ね」
「そういえば未晴っていつも奇麗にしてるね」
「やっぱり。少しでも奇麗にしておいた方がいいから」
 こう言うのである。
「だからだけれど」
「いい心掛けね」

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