第一章
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魚を釣って
呂尚の妻はよく夫にこう言っていた。
「全く、どうしていつも」
「書を読んでか」
「そのこともありますが」
長い髭に深い叡智を放つ目を持つ夫に対して言うのだった。
「貴方のお仕事は一番いいのはです」
「羊の放牧だな」
「そうです、姜族なのですよ」
この生まれだからだというのだ。
「そして幼い頃からされていきましたね」
「うむ、それはな」
呂尚もその通りだと認める。
「ここに来るまでな」
「ではです」
「羊の世話をか」
「されて下さい、それでどうして釣りばかりされますか」
「釣りで魚を釣るのも糧を得られるぞ」
「そう言って釣られたことはありますか」
そもそもというのだ。
「あなたは」
「そう言われるとな」
「一匹もですね」
「うむ、しかしな」
「魚釣りをですか」
「わしはしたいのだ、そしてだ」
呂尚はさらに言った。
「この前占ってみてな」
「そういえばあなたは占いにも通じていますね」
「かなりの自信がある」
「ではです」
それならとだ、占いのことからも言う妻だった。
「あなたは占いをされてはどうですか」
「それで生きよというのか」
「そうです、占ってお礼を貰えば」
それでというのだ。
「かなり儲かりますよ」
「そなたはそうした話ばかりするな」
「当然です、折角の富を書ばかりに使い」
当時非常に高かった書を多く手に入れて読んでというのだ。
「そしてです」
「釣りをか」
「全く才能がないというのに」
妻が見る限りそうだった。
「折角姜族の中でも名士だというのに」
「このまま釣れないことばかりしてか」
「いいのかと言っているのです」
「そなたは厳しいのう」
「厳しいも何もです」
妻は呂尚に口を尖らせて述べた、ついでに言うと顔も赤くなっている。
「あなたはご自身に合った仕事をされて下さい」
「羊の世話なり占いなりか」
「占いは自信がおありですね」
「外れたことはない」
「ではそれで暮らして下さい」
「まあ聞け、それで占うとな」
「はい、どうだったのですか」
妻はとりあえず落ち着いて夫の話を聞きなおした。
「その結果は」
「このまま釣りを続けていると近いうちに面白いものを釣るという」
「龍でも釣られますか」
「天下の兵法書を釣るという」
「天下のですか」
「そしてその兵法書で学んだものでな」
呂尚は妻にさらに話した、街の中でもかなりいい家の中で。
「王を助けて天下を救うとある」
「天下を。商の王様をですか」
「そこまではわからぬがな」
「とにかく天下の兵法書をですか」
「釣ると出た」
「信じられませんね。若しもですよ」
妻は夫に口を尖らせたまま言った。
「兵
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