第二章
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「それが何か」
「左様ですか、ではです」
「それではか」
「宜しければ」
こう前置きしての言葉だった。
「今夜泊まるところがなければ」
「泊めてくれるのか」
「飯は貧しくまずく床も粗末ですが宜しいでしょうか」
「夜露を凌げるなら充分」
これが天王の返事だった。
「それで」
「左様ですか、それでは」
「うむ、かたじけない」
天王は男の好意に感謝しつつ彼の招きに応じて家の中に入った、男は天王を家の中に入れると蘇民と名乗った、家にいるのは彼だけで他には誰もおらず実際に貧しい家であった。
内装も古くぼろぼろでものも少ない、最低限の農具が見られるだけだ。実際に出される飯も雑穀の薄い粥で量も味も粗末だった。しかも。
床も粗末だ、しかし蘇民は天王を彼が貧しい旅人にしか見えずとも心を尽くしてもてなした。天王はそこで彼の心を知って深く感じ入った。
それで翌朝旅に戻る時にだ。彼に一つの宝玉を出した。
「これは」
「うむ、牛玉といってな」
「牛玉ですか」
「これに祈ると七珍万宝が出る」
「何と、珍しい宝が山の様にですか」
「出る、そうなればそなたの家は忽ちのうちに豊かになろう」
「その様なものを頂けるとは。それに」
蘇民は牛宝という言葉から察した、そのうえで彼から見れば旅人にしか見えない天王に対して問うた。
「牛といいますと貴方は」
「それは言わぬこと、だがな」
「昨夜のお礼としてですか」
「この宝を与えよう」
「有り難うございます、それでは」
「うむ、また会おう」
天王は蘇民に笑顔で述べて旅に戻った、このことはすぐに村中の話題になり長者も旅人が天王と知ってその無礼に恐れ慄き祟りがあるのではと怯えた。
天王は程なく龍王のところに着き神社と狩りでそれぞれ言われたことを話した、すると龍王も頷いてだった。
三番目の姫を呼び天王と合わせた、するとその姫は大層美しくしかも気立てもいいうえに山鳩が言って通りに天王の外見普通は怖いというそれをえらく好んでいた。
それが為にすぐに結婚となり天王は姫と結婚して僅か八年の間に七人の息子と一人の娘をもうけることが出来た。
天王は忽ちのうちに子宝にも恵まれる様になったがここでだった、神社で家族と共に幸せに凄しつつ言った。
「大切なことを忘れておった」
「どうしたのですか」
「うむ、そなたに会う前に一人の貧しい者の世話になってな」
その蘇民のことを話したのだ。
「そのことにな」
「恩義を感じておられて」
「うむ、幸せになったと挨拶をしようと思う」
「ではこちらにお呼びしては」
「そうであるな、それではな」
こうしてだった、天王は早速蘇民のところに人をやった。すると蘇民は天王が与えた牛玉のお陰ですっかり裕福になり家は大きく新しいものになって
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