第一章
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火を吐く王子
ディエトリーヒ=フォン=ベルンは今のイタリア北東部にあたるベルネの王子だ、本来ならば彼が王になる筈だったが。
彼の叔父があれやこれやという理由で王になった、すると叔父は文武に優れ人望もある王子を自身の座を脅かす者として考えだした。
それでだ、ある日彼にこう命じた、
「近頃属が多い」
「だからですか」
「そうだ、そなたが行ってだ」
そのうえでというのだ。
「賊達を成敗してくるのだ」
「わかりました」
見事な長身に引き締まった体格だ、猛々しい赤髪は燃えている様であり黒い目からは極めて強い光が放たれている。
如何にも勇敢そうな顔立ちで尚且つその腰には名剣エッケザックスがある、その名剣も王にとっては脅威だった。
それでだ、王は王子に難題をふっかけて都合よく消そうと考えてそうしてなのだ。
領内の賊達の成敗で死なせる様にしたが。
王子にだ、白い髭を生やした大男がこう言った。
「王子よ、では」
「うむ、ヒルデブラントそなたもだな」
「及ばずながら」
供をさせてもらうというのだ。
「宜しいでしょうか」
「頼む」
王子は彼に笑顔で応えた。
「私の学問と武芸の師でもあるそなたが共ならばな」
「それならばですか」
「もう怖いものはない」
だからだというのだ。
「是非頼む」
「それでは」
「王子、我等もです」
他の者達も名乗り出た。
「お供致します」
「そして王子の手足となります」
「領内の至るところの賊達を成敗しましょう」
「そうしましょう」
「そうか、そなた達も来てくれるか」
オウジは彼等にも応えた。
「それではな」
「はい、宜しくお願いします」
「何なりと申しつけ下さい」
こう言ってだ、そしてだった。
王子はヒルデブラントだけでなく多くの家臣達を引き連れそれで出陣した、王はそれを見て唖然となった。
そして王の傍にいる道化がおどけた仕草と口調で言ってきた。古代ローマの喜劇に出て来るコメディチックな役の姿になっている。
「王様、王子様やってくれますよ」
「そ、そうだな」
王は道化に引き攣った笑顔で応えた。
「ヒルデブラントだけでなくあれだけの者達が供ならな」
「皆我が国の立派な者達」
「王子は人望もある様だな」
「いや、あの方が出陣されたなら」
道化は笑いつつ話した。
「もう安心、賊達はです」
「無事にだな」
「皆征伐されて」
「国も民も安らかになるな」
「そうなりますよ」
こう話してだ、そしてだった。
道化は王子を讃えて芝居をはじめた、王は道化のその芝居に仕方なく褒美をやってだった。そのうえで王子が何とかここで死ぬ様に祈った。
だが王子は暫くしてヒルデブラントと家臣達を引き連れて
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