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ある晴れた日に
120部分:谷に走り山に走りその十六
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谷に走り山に走りその十六

「このキャンプがね。本当に」
「そんなに疲れます?キャンプが」
「楽しいのに」
「先生と生徒じゃやることが違うのよ」
 まず先生は自分の生徒達にこう述べた。
「朝早く起きて夜遅く寝て」
「お酒も抜けきっていないのに起きてですね」
「まさか。飲む余裕もないのよ」
 静華の少し意地の悪い突込みにもこう返すのだった。
「そんな時間もね。テントの中での打ち合わせも長いし」
「その間は飲まないんですか」
「仕事中は禁酒」
 真面目な言葉である。
「当たり前でしょ。仕事なのよ」
「何か先生っていうのもしんどい仕事なんですね」
「案外楽だと思っていたのに」
「ベン=ゴードンなんか毎日三時には仕事が終わるのに」
 推理小説の主人公であり教師でありながら事件を解決していく。ニューヨークの下町の学校の先生であり愛車は白いポルシェである。
「そうはいかないんですね」
「あれは不真面目な先生よ」
 顔を顰めさせて皆に言う先生であった。
「三時って。何処の世界の先生よ」
「三時には終わらないんですか」
「一日十二時間勤務よ」
「うわ、半日って」
「それで残業代なしじゃやっていられませんよね」
「残業は出るのよ、うちの学校は」
 話はどんどん変な方向にいっている。そうさせているのは他ならぬこの先生であるが。横では田淵先生が心配そうな顔をしてその江夏先生を窺っている。
「けれどね。それでもハードなのはハードだから」
「そうなんですか」
「じゃあやっぱり三時には」
「絶対に終わらないわ」
 断言であった。
「そんなの有り得ないから」
「そうなんですか。有り得ないんですか」
「やっぱり先生も辛いんですね」
「特にこうした催しの時にはね」
 今度は右手で自分の左肩をとんとんと叩く。
「疲れが溜まるし。旦那は家事をしてもいい加減だし」
「ああ、家事もあるんですね。女の人だから」
「そうよ」
 桐生に対して話す。
「そこのところ。よく覚えておきなさい、男の子はね」
「はあ」
「男も家事しないと駄目なんですか」
「あたりめえだろうが、そんなことよ」
 春華が竹山に対して言った。
「女だけにやらせていいもんじゃねえだろ?それはよ」
「確かにそうだけれど」
「それで竹の字よ」
 春華は竹山をこう呼んだ。また仇名を作る彼女だった。
「あんたは家事ちゃんとやってんのか?やってねえと駄目なんだぞ」
「一応は」
 とりあえず答えることのできた竹山であった。
「食器洗ったり掃除したりはしてるよ」
「他には?」
「一人でいる時は自分で料理作ったり。インスタントやレトルトだけれど」
「まあまあってとこだな」
 春華はそこまで聞いて納得したのだった。
「そこまでやって
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