絶望を焚べよ、光明は絶えよ
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
士郎が強制的に貼り付けられていた心象世界を閉じる。縫い止めていた錨が抜けたのだ、もはや阻むものはなく世界は閉じた。
現れる地点を、地べたに座り込んでいるクー・フーリンとオルタ、自分も纏める。そうして現実世界に帰還する寸前、オルタの顔色が変わった。
根拠のない、勘。虫の知らせ。まだ何も終わっていない、いや寧ろ漸く何かが始まったような……
「なっ!?」
現実世界の元の座標、私椋船『黄金の鹿号』の甲板に帰還するはずが、士郎達が現れたのは海の上だった。
着水した士郎が驚愕したのは、何も海に落ちたからではない。空が崩れ、世界の理が修復されていく光景を目にしたからだ。
定礎復元が成されたらしい。問題はドレイク達の姿が見えず、辺りに誰もいなかった事である。士郎は焦った、満身創痍のクー・フーリン、消滅間際のオルタ、そして自分のカルデアへの退去が始まっている。カルデアとの通信が戻った。
『士郎くんッ!』
「……ロマニか?」
立ち泳ぎするのも難儀な傷だ。士郎は嵐が治まっている幸運に感謝しながら応じた。
切羽詰まった声が届く。ロマニが鬼気迫る顔で言い募った。
『いいかい、自分の存在を確り認識して、イメージしておいてくれ!』
「……何かあったのか」
『カルデアが攻撃された! レフだ! 機材が損傷してる、レイシフトが万全に行えない可能性があるんだ! 他の皆はなんとか帰還出来たけど士郎くんはまだ安心できない、頼むから気を張っててくれ!』
士郎はその報せに苦虫を噛み潰したように歯噛みする。カルデアとの繋がりを克明に意識しながら士郎は言った。
「オルタが致命傷を負っている。そちらでアイリさんをスタンバイさせておいてくれ」
『オルタが? ……分かった、だからなんとか無事でいてくれよ、士郎くん』
オルタはえもいえぬ悪寒に震えた。士郎の腕を掴む。無理矢理に捻出されたオルタの魔力が、士郎の中にある聖剣の鞘に注がれた。魔力が足りなかったのか、左目は治癒されなかったが両腕は治る。
「オルタ! 余計な事を――」
「聞いてください、シロウ」
既に消えかけている身で無茶をするオルタへ、怒号を発そうとした士郎を制して彼女は強張った顔で告げた。
それは、これから始まる地獄のような未来を直感してのものだった。声に詰まる士郎へ、彼女は悪寒を抑えている。
「嫌な感じがします。万全の態勢を整えていてくださ――」
転瞬、オルタとクー・フーリンが消えた。カルデアへ退去したのだ。士郎は間もなく己も退去するのだろうと身構える。
どこかへと引かれる感覚は、いつものレイシフトのそれで――
――士郎は、海から陸へと転移していた。
「は……?」
目を白黒させる。此処はどこ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ