絶望を焚べよ、光明は絶えよ
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ない、もっと悍ましい何かだ。
魔槍が担い手の許へ帰還していく軌跡を見る間もなく、士郎は死に物狂いで退くも追撃は迅い。干将を巨槍の軌道に置いて辛うじて受け流すも、干将も破損する。再び反動だけで右腕が砕けた。進退極まり、万事休す……されど士郎は諦めずにその場に倒れ込む。受け身も取れないで倒れた士郎の真上を巨槍が過ぎ去る。大気を貫き真空の穴が生まれるほどの刺突――二秒、経った。
「約束された……!」
全身全霊、乾坤一擲。オルタが士郎の後を繋いで飛び込んでくる。射出機より撃ち出された戦闘機の如き彼女を、魔神霊は容易に対処出来ると嘲笑う。この霊基は切り返して黒王を屠る事を可能とする性能があった。
黒王の顔が曇る。マズイ、と。だが止まる訳にはいかないのだ。これで決めねば、負ける。負ける訳にはいかない。主の信頼を裏切る訳にはいかないのだ。躰を張って価千金の二秒を稼いだ彼の労を無為にする訳にはいかないのである。黒王は吼えた。魔竜の咆哮が轟く。
なれど磐石なるモノを前に奇跡は起きない。そんなものは何処にもない。
――故にそれは必然であった。
魔神霊の躰が止まる。驚愕する魔神霊の霊基が最後の力を振り絞ったのだ。
英霊を蔑み、見下し、駒とした彼の魔神にとって有り得てはならない反逆。彼は、ヘラクレスを嘗めた。敗因はそれだった。
「勝利の剣!」
そしてその一瞬の隙を見逃すオルタではなかった。解き放たれる闇の断層、究極斬撃。闇の奔流ではなく、聖剣へ籠められた莫大な魔力を直接叩き込む。大上段からの斬撃は確実に魔神霊を真っ二つに切り裂――
『■■■■■■■――!!』
声にならぬ絶叫が上がる。両断されながらも魔神霊は足掻いた。頭部を斬断される寸前、巨槍を握る腕が遮二無二振るわれ。
オルタの胸を穿った。
「カ、ハ……!?」
魔神霊が縦に割れる。膨大な闇の斬撃の奔流に五体が四散し死を遂げる。聖杯が溢れ落ちた。
同時、オルタが膝をつく。
「セイバー!?」
士郎は跳ね起きて、自身の傷すら省みず倒れるオルタを抱き止めた。砕けたままの腕が激痛を訴える事など気にもならなかった。
悟る。オルタの霊核に致命的な損傷が入ったのだ。最後の最後で足掻いた魔神霊が相討ちに持っていったのである。オルタはただでさえ白い貌を青くし、薄く笑みを浮かべた。
「シロウ……なんて貌をしているのですか」
「……っ」
「勝ったのです。誇ってください、私はまた、貴方の声に応えカルデアに戻ります」
「もういい、喋るな。再召喚の必要はない、すぐに固有結界を解除する。アイリさんに治してもらえばいいんだ」
「そう……でしたね。ならもう少し……気を張って――」
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