絶望を焚べよ、光明は絶えよ
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深呼吸をして、肩筋を大きく抉られ、重傷を負っているクー・フーリンを見た。
ほんの十秒の休息。
オルタが弾き飛ばされた。黒剣の切っ先で地面を削り、吹き飛ばされる衝撃を殺して踏ん張ったオルタの間合いに魔神霊が踏み込む。豪快に振るわれた巨槍がオルタを打ち据えその堅牢な鎧を砕き割った。
吐瀉に混じる血。苦痛に歪むオルタの秀麗な美貌。士郎は短く指示を飛ばした。下がれと。そして、彼は傍らのクー・フーリンに、
「ランサー、一人で奴を抑えてくれ」
死んでくれと、命じた。
「ハ――それしかねぇか。任せろよ」
クー・フーリンは莞爾と笑った。死地など幾度も越えてきた、こんな所で死ぬ己ではない。ましてや敵は英雄でもなければ戦士でもなく、怪物ですらない英雄の骸だ。こんな相手に殺されるものかと彼は確信している。
分の悪い賭け……ではない。勝算は充分ある。半刻も手こずっているが、必ず勝てると確信していた。
オルタが下がってくるのに合わせ、光の御子が翔んだ。蹴り穿つ蹴撃が魔神霊の腕に阻まれた。何ら痛痒を覚えず、魔槍を地面に突き刺し基点としたクー・フーリンは、己を襲う最果ての槍を紙一重で躱した。掠める歪な穂先が翻り、着地したクー・フーリンを打ち倒さんと乱気流を巻き起こす槍撃が乱れ打たれる。応じてクー・フーリンは魔槍を閃かせた。
消耗は激しい。ルーンは尽き、最果ての槍の真名解放を城を楯にする形で防ぐも肩筋を大きく抉られていた。常人なら瀕死と言える重傷である。しかしそれでも戦えるのがクー・フーリンだ。口腔が開く、「雄ォォオオオ――ッッッ!!」精強なるケルトの戦士をして心折られ、戦いを放棄させるまでに萎縮させる雄叫びが轟いた。
「……セイバー、次の一撃に総てを賭ける。お前の聖剣で、俺に勝利をくれ」
「――拝承した。私の命運は貴方と共にある。シロウ、我がマスター。貴方に勝利を約束しましょう」
激甚なる瀕死の光輝、死したる骸の魔神霊の応酬が刃鋼の音色を奏でる。
空間が拉げ、気流が爆発し、剣の丘を爆心地に変える壮絶な死の宴だ。血反吐を吐きながら時を稼ぐクー・フーリンは、聖剣へ爆発的に注ぎ込まれる原始の呪力を感知し阻止せんとする魔神霊を単騎、食い止める。
黒い聖剣が瀑布のような魔力の猛りに呼応し、魔竜の牙の如くに膨張していく。士郎は己の魔力の大半を注ぎ込んだ。オルタの魔力炉がそれを錬成して倍増を繰り返す。黒剣に充填された魔力が闇に変換され、集束・加速を臨界まで反復し、運動量を増大させる。
オルタもまたその高まる魔力に肉体の限界を迎えていた。もはや真名解放の反動を受け止めきれるか判然としない。だがそれで怖じる胆力ではない。オルタは己の力への自負を抱く。
クー・フーリンの躰のキレが悪い。傷が重く、不利な
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