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人理を守れ、エミヤさん!
風前の灯、少女達の戦い (後)
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、そして危機に在りても鉄面皮に揺らがさず指令を発した。

「ロマニ・アーキマン、レオナルド・ダ・ヴィンチ。各区画の破壊を防ぎに向かえ。アーチャー、アサシン、ハサン! お前達は敵エネミーの殲滅だ。王よ、あなたは魔神柱を撃破していただきたい。私も援護します」

 ――魔神柱、顕現――

 カルデアの床を下から貫くようにしてその肉の柱が具現化する。多数の魔眼の眼球が、嘲弄の念も露に全ての者を見下した。嘲った。
 警報が鳴り響く。赤いランプが点灯する。レフは確かに殺された。だが死んだとて復活する触媒はカルデアにあるのだ。この器を用いての顕現である。カルデア内部に巨大な魔神柱が発生した事で、たちまち渡り廊下や壁面、電灯を破損させてしまう。

 敵エネミーが一斉に動き出した。アタランテが迎撃の矢を放つ。アサシンが舌打ちして短機関銃を掃射した。百貌のハサンが雑魚の掃討に乗り出す。分裂する暗殺者の統制の取れた連携は、あくまで竜牙兵のみを狙ったものだ。
 アルトリアが風の鞘を解く。裂帛の気合いと共に疾走し、その背後を黒い甲冑を纏った騎士が追う。魔神柱が凝視した、魔眼が無作為に魔力を発してカルデアの設備ごと蹂躙せんと嘲笑を爆発させた。

 イリヤは、震え上がった。

 明確な殺意、殺気――命の危機が、彼女を総毛立たせる。
 死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない――! 竜牙兵が剣を振り翳してイリヤに躍りかかった。それを砕いたのはダ・ヴィンチの腕に嵌め込まれた巨腕、打ち出されたパイル・バンカーである。

「御免ッ! 私はもう行く、カルデア内に湧いた敵が此処にしかいない訳じゃないんだ。イリヤスフィールちゃん、踏ん張ってくれ!」

 駆け去り際に、ロマニはイリヤの肩を叩いた。魔神柱にすら気取らせぬ魔術が掛けられる。イリヤと桜、美遊を繋ぐレイラインの構築。そして彼女へと付与される身体硬度の増す防御魔術。ロマニは苦渋の顔で言った。逃げてもいい、だから生き延びてくれ――

 生存本能の訴える悲鳴が五月蝿い。哭き喚くような心臓の鼓動。ダ・ヴィンチの激励、ロマニの優しさ――イリヤは挫けない、ここで立ち往生していては、それこそ死に至る。死の恐怖に支配されながらも、生き残る芽があるなら止まらないのが彼女の本質だった。
 瞭然たる脅威。進撃せんとする敵性体。己を眼中にも入れていない魔神柱。誰も期待せず、見向きもされていなかったイリヤは吼えた。

「ぁ、ぁぁあああ――ッッッ!!」

 満身から吼えた。腹の底から咆哮した。
 そして己の頬を叩いて怯懦に竦む心に活を入れ、イリヤは人間として、生物として立ち上がった。

「桜ちゃん! お願い、行って!」
「……っ!」

 幼い少女の体を覆う黒い甲冑。繋がれたパスを通じて注ぎ込まれ
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