第七十四話
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ひっぐ…………えっぐっ…………」
流石に、目の前で泣いてる女の子をほっとけるほどの甲斐性なんて、持ち合わせている筈がない。
どうにかして泣き止ませねば、と、覚悟を決める。あと、缶蹴りが終わったら拓海を問い詰める覚悟も。
「…………お前に昔、何があったのかは知らない。だから、俺が何をしたらお前に信じてもらえるのか分からない」
「へ…………?」
俺の言葉を聞いて、怪訝そうな顔をする阿武隈。正直な話、人を説得するのは俺の得意分野ではない。だけど、これから長いこと共にいる人間の一人だ。だから、せめて警戒されない位の関係になりたい。
「だけど、お前が俺と話すことだったり、近づくことが嫌なら、俺はお前に関わらない。俺のせいで誰かが悲しむのは嫌だからな。勿論、お前も、な」
俺は彼女にそう告げると、来た道を引き返すために後ろを向いた。
「何かあったら、そうだな……春雨にでも相談してやってくれ。喜んで力になろうとするだろうぜ?」
俺はそう言うと、わざと肩を落として、トボトボ歩き出す……意識してしなくても、拒絶された事自体は普通に悲しかったので、残念な雰囲気は出たと思うが。
「……まっ、待って!」
俺が歩き出して数歩、案の定、阿武隈は俺を引き留めた。
俺はピタリと足を止めると、半身になって阿武隈を見た。相変わらず涙目で、しゃがみこんでしまっているけど、何かを伝えようとしているのか、何度か口を開いては閉じ、を繰り返していた。
「えっと……あの……その……〜っ!」
しかし、自分でもどうしたらいいのか分からない、と言った感じで、ただただ困惑している様子だった。
「……ご、ごめんなさい……っ!」
それでも、謝罪の言葉を口にする。俺は、どうしてもこんな態度をとっている阿武隈に、怒りが湧かなかった。
「……お前のせいじゃねぇよ。間違いなく、な」
「…………っ」
俺は完全に阿武隈の方に向き直ると、目の前まで移動して、目線の高さまでしゃがみこむ。
「謝る必要も、俺に説明する必要も、不安になる必要も無い。俺にゃ、女の子を泣かせて悦ぶような下衆な趣味は無ぇ」
レ級との戦いの後の春雨の涙には喜んだけどな、と、心の中で呟く。悦んだ訳でなく、喜んだのだから,セーフと思おう。
「信じてもらえなくても構わない。それこそ、信じれない様な目にあったんだろうからな」
あいにく俺は、今までの人生は物語にありそうな奇怪なものじゃなかった。精々、悠人や拓海と大喧嘩したくらいだ。だから、阿武隈の気持ちは、想像の範囲内でしかない。
だが、俺にできることは、話す事しかない。
誰でもできるけど、今は、俺にしかできない。
俺は阿武隈の瞳を覗き込んだ。
「そんな事で、俺
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