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ぶるぶる
第四章
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 二人はここで不意にだった。
 全身に寒気を感じた、それで思わず言った。
「あれっ、何か」
「寒いね」
「私結構厚着してるのに」
「僕もだよ、まして急にこんな風に感じるなんて」
 淳は身体の震えを実際に感じつつ述べた。
「有り得ないよ」
「どういうことでしょうか」
 史織は不思議に感じた、その時にだった。
 ふと車に前に女を見た、黒髪を長く伸ばした女だが。
 その女は日本の昔の着物を着ていた、しかもだ。
 全身が常にぶるぶる震えていて両手をだらりと悠頼の様に出している、歯はガチガチと慣らしている。その女を見てだ。
 史織は震えつつも自分と同じく震えている淳に言った。
「あの、叔父さん」
「どうしたのかな」
「あそこ」
 女を手で指し示して囁いた。
「まさか」
「あっ、あれは」
 淳もその女を見た、それで姪に答えた。
「妖怪だよ」
「そうですか」
「あれはぶるぶるだね」
「ぶるぶる?」
「人の傍にいると体を震わせる妖怪だよ」
「今の私達みたいに」
「そう、今もね」
 実際にというのだ。
「そうさせる妖怪だよ」
「そうなんですね」
「学校にもいたかな」
 八条学園、自分の出身校で史織が現在通っている学校にもというのだ。
「あの妖怪は」
「いるかも知れないですね」
「とにかく妖怪が多い学園だからね」
「そうですね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「あの妖怪は人を震わせるけれど」
 そういうことをするがというのだ。
「特に悪いことをしないから」
「震わせるだけですか」
「それだけだよ」
 あくまでというのだ。
「だから気にしなくていいよ」
「本当にそれだけだからですね」
「うん、じゃあね」
 淳は史織にあらためて話した、まだ身体は震えている。
「家に着いたし」
「はい、今日も有り難うございます」
 史織は叔父に微笑んでお礼を述べた。
「お陰でお家にすぐに安全に着きました」
「安全が一番大事だからね」
「女の子の夜の一人歩きは危険ですか」
「史織ちゃんは奇麗だしね」
 姪の整った顔についても言うのだった。
「だからね」
「それはお世辞ですよ」
「お世辞じゃないよ、だから余計にね」
「女の子の夜の一人歩きはですか」
「危ないから」
 それでというのだ。
「これからも僕が出来る時はね」
「送ってくれますか」
「そうするよ、じゃあまたね」
「はい、また」
 史織は叔父ににこりと笑って応えた、もうこの時には二人共身体の震えはなくなっていた。妖怪は何時の間にか姿を消していた。そうして史織は自分の家に入り淳は車に戻って自分の家に向かった。二人共今はそれぞれの夕食のことを考えていた。


ぶるぶる   完


              
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