第一章
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ぶるぶる
及川史織はこの時不機嫌だった、それで大阪市福島区の自宅の最寄りの駅前まで迎えに来てくれた叔父に愚痴を零していた。
「酷いですよね」
「酷いといえば酷いね」
叔父の及川淳は姪、兄の娘である彼女に運転席から応えた。実は車で迎えに来たのだ。
「それは」
「幾ら先輩でも言っていいことがあります」
「人に対して言う言葉じゃないね」
淳はバックミラーに映る姪を見つつ応えた。きりっとした気の強そうな目で細く長い眉の形はしっかりしている。さらりとした黒髪をストレートで腰まで伸ばしていて白いセーラーの上着に青のネクタイから巨大あ胸がはっきり出ている。青と黒とタートンチェックのスカートから黒い膝までのそっくるに覆われた見事な足が見える。
その姪にだ、淳は言った。
「それは」
「ですから私もどうかとなって」
「先輩に言おうと思ったんだね」
「そうしたら言っても無駄と言われて」
それでというのだ。
「友達から」
「言わなかったんだね」
「そうですけれど今も不満で」
「ああ、それは言わない方がよかったね」
淳は姪に運転席からまた言った。
「若し言ったらね」
「よくなかったですか」
「相手は先輩だからね」
「言ったら駄目ですか」
「きつい言葉言おうとしたよね」
「はい、怒りましたから」
史織は叔父に後部座席から答えた。
「いい加減にして下さい、間違ってますとか」
「そうだね、けれど先輩にはね」
「言わない方がいいですか」
「先輩によるけれど」
「その先輩はですか」
「言っても無駄な人っぽいしね」
淳が聞く限りではだ、彼はその先輩には会ったことはないがそれでも姪の言葉から言ったのである。
「そうした人には言っても自分がまずくなるだけだから」
「保身ですか」
「身の安全は守ることも智恵だよ」
「保身なんか考えたら」
「まあまあ、正攻法だけじゃないよ」
「そうですか?」
「そうしたことは生きていればわかるよ」
そうしたこともというのだ。
「おいおいね」
「そうですか」
「叔父さんは特にタクシーの運転手をしているとね」
色々な人に出会う、それでだ。
「わかったりするんだよ」
「そうですか、そういえばお父さんも」
「兄貴に言ってるよね」
「民俗学を学んでいると、と」
史織の父は高校で先生をしながら民俗学者として活動している、尚史織の父も淳も史織も同じ高校だ。八条学園高等部だ。史織の父と淳はそこから八条大学に進んでいるし史織も将来そうなると言われている。
「何かと」
「人生経験を積めばわかるよ」
「そうした先輩にどうすればいいかも」
「言っても無駄な上の人にもね」
「そんなものですか」
「世の中色々な人がいて」
淳は自分の
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