第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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は。
「フィグネリア。ティッタ。あなた達二人はいつか、どこかで『世界は丸い』という言葉を聞いたことがありますか?」
なるべく平静を装いながら、ヴァレンティナは目の前の人間に問う。戦姫の表情にはかすかな真剣さがある。
彼女の雰囲気に二人は言葉を発せず、疑心ぎみながらこくりと首を縦に動かす。
「あたし……お母さんから『童話』でそのような話を聞いたことがあります。「うそつきモントゥール」という題名だった気が……」
うそつきモントゥール。それは、ブリューヌのルテティア南東にある小さな領地の名前であり、かつてそこには、領主である一人の父親と、次期当主である二人の息子が住んでいた。物語は、登場人物の父親は天文学に聡明な学者であったが、ある日突然『世界はまるい。そしてまわっている』と狂言したことがきっかけで、世界中が恐怖に陥るという内容だ。
この世界の人々は『平面説』を信じていた為に、(というよりも、自分たちの世界はもともと絵本のページのようにまっ平らだと思っていた)我々登場人物は、『神』が『紙』に記した物語を追っているにすぎないと)民たちは瞬く間に暴徒と化した。無理もない。『重力』という概念が世間に浸透していない以上、その話が本当で、今自分たちのいる丸いなら、このままではすべてが「空へ落ちてしまう」からだ。
そう思い込み始めた民達は狂い、暴れ、怯え、悲観に明け暮れた。そしてとある村に一人の男がふらりと現れて、村人たちに厳かに告げる。
「この世界に落とされた精霊の鎧――炎の甲冑を集めよ。さすれば善と悪、虚構と真実がわかるであろう」と。
ついに村から一人の人物が立ち上がる。この登場人物こそが勇者と呼ばれ、元凶である異端学者を退治する内容へつながる。やがて勇者は甲冑を集め、精霊より浄化の光――すなわち炎を授かり、鎧に宿す。これを身にまとうつもりでいた勇者は精霊からお告げを受ける。
『元凶を葬るものは必ずしも『王者の剣?デュランダル』ではありません。この『光の鎧』こそが、元凶を浄化するものです。さあ、この鎧を今こそ着せるのです』
精霊は語る。邪悪そのものである者は、斬るでは倒せない。着せるのだ。咎人を『清めの炎』で浄化する聖なる甲冑とその罪を。そして夜――父親の寝ている隙を狙い、鉄制の椅子に座らせてはそのまま拘束し、勇者はひとつずつ甲冑をはめ込ませた。
小手。靴。胸冑。背板。そして――――鉄仮面。
こうして『浄化』された元凶が、この世に残したのは『妙な土くれ』だけだった。さっそく勇者は元凶を倒したことを告げ、甲冑の部位を集めまわっていた時に感じたことを告げた。やはり世界は平らなんだと。それを聞いて安泰だと胸をなでおろしたものもいれば、新たな勇者が誕生したことを胸の底から祝ったものもいた。このようにして物語は一応『めでたし
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