第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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語を見届けたい。
――君は想いで。俺は力で――
あの日、ティッタに力強く語ってくれたあの言葉は忘れていない。
いつかあなたが世界中から抱愛される時を信じて。
――――◇――――◆――――◇――――
かくしてティッタ達は一端『銀の流星軍』の幕営地に戻り、マスハスやリムアリーシャに事情を説明してヴァレンティナと同行することになった。無論、リム達から猛反対を受けた。ましてや、戦う力を持たないティッタが同行するとなれば、なおさらだった。
そして、さらなる衝撃がリム達を襲った。遥か遠方の地にいるはずのヴァレンティナが、アルサスに出現したからだ。
当初、オステローデ公国の戦姫が現れたことに、主要人たちは動揺の色を隠せなかったが、『第二次ディナントの戦い』で駆けつけてくれた凱に比べれば、まだ衝撃が少ないように思えた。
表向きの理由は、アリファール修復の進捗を随時確認するため。ティッタは侍女なので民と装えるから適任。フィグネリアはティッタに雇われた傭兵。ヴァレンティナは虚空回廊を警護する自宅警備という不遇な設定を与えられた。
確かに、アリファールの修復は今後『銀の逆星軍』と戦うためには必要不可欠だ。いつ頃戻ってくるのか、どのくらい進んでいるのか、やはりリムアリーシャもマスハスも把握しておきたいのだろう。もちろん凱を信じている、いるのだが、兵達を安心させるための情報把握は欲しい。そういう意味では、一瞬で目的地へ移動できる存在がいるのは本当にありがたかった。
――――にしても。
(どうして私が自宅警備なのですか?)
(仕方ないだろう、他に理由なんてないから)
(戦姫様。ブリューヌを抜けたら建前はどうとでもなりますから)
などと小声で話したティッタは、ちょっとだけマスハスたちにウソをついた申し訳なさを感じていた。すみません。マスハス様。
ティッタの言う通り、どちらにせよ、表向きの理由なのでそんな設定はどうでもよかった。『抜けて』さえしまえば、理由はどうとでも変えられる。
「一つ教えてくれヴァレンティナ。どうして『夜』に行こうと言い出したんだ?」
「簡単に言いますと……私のいるところが『夜』なら、ガイのいる向こうが『昼』だからです」
「意味が分からん。どういうことだ?」
それはティッタもフィグネリアと同じ感想だった。
こちら側の地理学が独立交易自由都市と同様に発展していれば、『時差』という概念を持ち出して説明できたかもしれない。
だけど、ヴァレンティナも彼女たちをあまり馬鹿にはできなかった。なぜなら、かつての自分も、その程度の知識しか持ち合わせていなかったのだから。独立交易自由都市へ赴くまで
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