第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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、彼を知る為に自分たちの平和を失う『覚悟』をしなければならない」
「覚悟……ですか」
ティッタの臆した声に、ヴァレンティナは無言でうなずいた。
「この選択はあなた達が決めるのです。準備が出来たら私の前に――このエザンディスと私、ヴァレンティナ=グリンカ=エステスが、『暁』へ至る道案内を務めさせていただきます」
これが……虚影の幻姫の精いっぱいの返事だった。
勇者獅子王凱と共に歩みたければ、覚悟を決めなければならない。
(ああ、だからガイさんはあたしたちを『置いて』いったんですね)
ティッタ達の『日常』を犠牲にしてしまうことが、凱には分かっていた。
分かっていたから――ティッタ達をここブリューヌへ置いていったんだ。置いて行かれたんだ。
優しいガイさんには……できるはずがない。するはずがない。
分かっていたはずなのに……。
「ティッタ――」
慈しむ眼差しでフィグネリアが優しくその名をつぶやく。まるで、親鳥が雛鳥を慈しむような囀りで。
『乱刃の華姫』、『隼の舞姫』を持つ彼女とて、自分が思うほどティッタは弱いとは思っていない。
しかし、いかなる猛禽類と言えど、雛鳥の巣立つ瞬間は多少なりとも不安を覚える。
今、フィグネリアがティッタに対して抱いている心境はまさにそれだ。凱を庇うわけではないが、そのことを想うと凱の気持ちがなんとなく分かってくる。同時に置いて行かれたティッタの気持ちもだ。天秤にも似た気持ちの傾く先は、果たしてどこだろうか?
「あたし……」
しばらくして、ティッタはぽつりぽつりと、小さく語り始める。一言一句大切にするかのように。
「あたし……ずっと思ってました。どうしてこんなにも力がないんだろうって」
それは、ひとつひとつ、思い出すように。
「ディナントの戦いが始まって、ティグル様が戦場へ向かわれて、敵国の捕虜にされたことをマスハス様から聞かされて――しばらくはアルサスを駆け巡ってお金を集めていました」
あれから結局ドナルベインにティグルの屋敷を襲われたところを、『通りかかった』凱に助けられた。
だが、ティッタの境遇はこれだけにとどまらなかった。
「ヴォジャノーイという魔物にも誘拐されたとき、本気で『死』を覚悟しました」
だけど――誰にも気づかれなかったはずなのに、アルサス郊外へ抜ける寸前で凱は駆けつけた。
「テナルディエ軍にアルサスが襲われたときも、もう駄目だと思いました」
それでも――凱は決戦前夜で訴えた。ティッタの勇気に応えるために。
俺は『力』で。君は『想い』で。
同じ人間だからこそ、気付かせるんだ。
お前たちが本当に焼き払おうとしているものは何なのか、本当に分かっているのかと。
焼き払う。それ自体がそもそも間違
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