第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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「虚空回廊のことでしょうか?確かにこの子……エザンディスの力でしたらガイの元へ駆けつけることは可能でしょう。しかし――」
「……しかし?」
「あなた方は、その『覚悟』はおありでしょうか?」
「覚悟?」
「既に知っているかと思いますが、今のガイはブリューヌとジスタート……いいえ、大陸全ての命運を背負っています。そしてガイの向かった先の独立交易自由都市……そこはガイの『過去』が眠る場所でもあります」
「――ガイさんの……過去?」
考えても、思ってもみなかった。
今日にいたるまで、ティッタにとって凱は憧れの人であり、恩人であり、見るものすべてを安心させる、頼りがいのある兄のような存在だとしていた。素性はよくわからないけど、決して悪い人じゃない。皮肉にもそんな凱の印象がティッタとしては『当たり前』になっていた。
「そうです。ゼノブレイドに挑戦すると告げた彼の言葉は、今まさに『過去』を斬り、『現在』を貫き、『未来』を切り開くため意味が込められています」
「……」
「彼の人生は、彼の運命は常に『人ならざる者』・『超越なりし戦い』にあります。もし、彼の真実を知れば知るほど、もはや後戻りはできなくなる。そうなればあなた自身も……アルサスもどうなるか分からない。それでもあなたは共に行きますか?あのひとが獅子の化身になろうとも」
「そんな!」
栗色の髪の少女に衝撃が走る。
獅子の化身。ティッタとフィグネリアには凱の眠るもう一つの顔を垣間見たことがある。
ティッタは対魔物――ヴォジャノーイ戦で。その『片鱗』を。
フィグネリアは対銀髪鬼――シーグフリード戦で。その『死闘』を。
ティッタはかつてヴォジャノーイと呼ばれる者に襲われたことがある。もしかしたら、凱と関わりを持った地点で安息の時が遠のいたのは、その時からじゃないだろうか?
思えば、そのヴォジャノーイも凱のことを『銃』と呼んでいた。凱は魔物たちのことをあずかり知らぬことだが、逆に魔物たちは凱をよく知っているかのような口ぶりを見せていた。今思えば、それらは何かの全て因縁じゃないかと。その延長上に自分たちはまきこまれてしまったのではないのかと。
そしてこの前は、ドナルベインが幼子の母親を手に殺けたことで、凱の心の奥底を束縛していた『鎖』が外れかけた。
――――死ね――――
たった一言……あの優しいガイさんなら……決して言わない言葉。
しかし、それをたやすく言い放った。まるで、野花に咲く一輪の花をそっと摘み取るように。
その瞬間、誰もが垣間見たはずだ。『王』として君臨せしめた獅子王凱の姿を。
だが、それは凱が望んでいたことではない。そうなったことでもない。ましてや、そうなのは望まずして訪れた結果にすぎない。
「勇者と共に歩みたければ
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