第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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、竜具の相互情報を共有する作用を有する。事前にエザンディスから点滅という形で『警告』を知らされていなければ、情報戦に富んだ流石のヴァレンティナも、動揺を隠しきれなかったかもしれない。
(しかし、戦鬼の一人がアルサスに訪れていたのは……いいえ、彼ら戦鬼の中でも最強と謳われる『鬼剣』が来ていたのは誤算でした)
これは……自分の采配不注意と言わざるを得ない。
まだテナルディエが祖国に反乱決起を起こす前、ヴァレンティナは戦姫としての務めを果たす傍ら、ジスタート内外の諜報活動に尽力していた際、部下からの報告で聞いたことがある。
報告が確かなら、戦鬼は戦姫と同じで7人。それぞれが要人暗殺に長けたテナルディエの特戦部隊。
そのうちの一人がノア=カートライト。またの名を『鬼剣?ブレイドオーガ』とも呼ばれる青年だ。
前回のアルサス焦土作戦に続き、今回のアルサス奪還作戦でも凱と対決することになるとは。
フィグネリアは、これまでのことをヴァレンティナに事の顛末を説明した。
「……折れたアリファールを修復するために、刀鍛冶の技術が唯一伝来している地、『独立交易自由都市』へ赴いたわけですね」
「そうだ。私たちに『後を頼む』と言って……私は、私たちはあいつに置いて行かれた」
フィグネリアの声に陰りが混じっていたのをヴァレンティナは見逃さなかった。
それはティッタも同じだった。
「それでも……今、あたしたちにできることは、ガイさんを信じて――」
そこまでティッタが言いかけた時、フィグネリアの『普段』な戦士の眼を自身に向けられる。
不意に受け取った、ティッタからの違和感。
まるで崩れた砂のパズルのような、決して当てはまることのないような空虚な言葉はなんなのだ?
とある『姫将軍』にぬいぐるみを作れるほどの器用さとは真逆に、自分の気持ちを縫いつくろえない、ティッタの不器用さは?
なんだか取り返しがつかなくなるような感覚は一体?
募る疑問がフィグネリアの焦燥を掻き立て、思わずティッタを問い詰めた。
「本当に?」
「え?」
突如、フィグネリアはそっとティッタの両肩に手を添える。
「それは本当にティッタの思っていることなのか?」
「フィグネリアさん、何を……」
「確かに私たちはガイから託された。約束もした。俺が戻ってくるまでアルサスを、銀の流星軍を頼むって。だけど――できることなら、どうしても、やっぱり私は――――『見届けたい』よ。あいつの物語をさ」
ティッタに向いていたフィグネリアの切ない瞳がヴァレンティナに向き直る。
瞳の奥底に宿る光が何を意味するかは明白だった。
「ヴァレンティナは……お前なら行けるだろう?ガイの向かった先を」
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