第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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情で固まっていた。だが、フィグネリアの言葉でエレオノーラと同じ立場の戦姫と聞いて、慌てて侍女としての礼を施す。
「は、はじめまして……戦姫様!あたしは」
「こちらこそはじめまして、『暁の騎士』ティッタ。私はヴァレンティナ=グリンカ=エステスと申します。以後、お見知りおきを」
ヴァレンティナが右手を差し出す。対してティッタもまた彼女の手をとった。自分と相手の身分差を考慮若しくは畏怖しての様子だった。
同時にティッタは驚きもしていた。
『暁の騎士』というのは、テナルディエからアルサスを取り戻した際にマスハスやジェラールから称賛されて送られた名誉であった。次代の王と成ったとの逸話を有する『月光の騎士?リュミエール』と対を成す『暁の騎士?スペリオール』の称号を得た者は、王の隣に並び立つ勇者になったといわれている。
王政が倒れている今となっては、そのような逸話など無意味に等しい。しかし、末端の兵やまつろわぬ民は常に『拠り所』を欲する。そのような意味でもティッタに称号を与える必要性はあったのだ。そもそもこの称号を授かったのはほんのわずか前の事だ。どう考えてもヴァレンティナが知るような時間的空白はけっして無い。
フィグネリアもまた驚きの色を浮かばせていた。ティッタとヴァレンティナの鉢合わせについて両者――特にティッタの反応を見る限りではこれが初対面のはずだ。なのにまるで『以前からあなたのことを知っている』かのようなそぶりで。
そう――――あの時の、失意に沈み切った凱を暁の光で満たしたように。
「じつは私、ティッタ――――あなたに一度お会いしたことがあるのですよ」
ティッタはおもわず目を見張り、彼女をまじまじと見つめる。以前、どこかで会ったことがあるのだろうか?
しかし、そのことを隠すようにして告げるのも何だかおかしい。
どこかでお会いしましたかと訊こうとしたとき、ヴァレンティナはフィグネリアに振り返る。その表情は先ほどと打って変わって真剣そのものだ。先に本題を済ませなければならない。
「単刀直入に聞きますフィグネリア。ガイはどこにいるのですか?」
「独立交易自由都市だ」
ためらいなくフィグネリアは答えた。
――――一瞬、ヴァレンティナの瞳が広がった。何の経緯が会ってかつての古巣へ戻っていったのか?
逃げたとは思えない。それは、ティッタとフィグネリア、双方の表情と声色を伺えばわかる。
何しろ、アリファールの気配を感じられないのが何よりの証拠。
「何があったのですか?」
「七戦鬼の一人、ノア=カートライトとかいう奴と戦って、アリファールをへし折られた」
さらに一瞬―――――ヴァレンティナは間をおいて固唾を呑んだ。
竜具の装飾である結晶素子は、戦姫の戦闘経験や感情以外にも
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