第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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外の時と場所で銀閃の風姫の名が出てくるとは思っていなかったと、フィーネは一人ごちる。
対してティッタも一人ふける。エレンと同行した時は、こんなに会話が弾んだことがなかったのだ。その時のエレンに対する印象は、ティッタにとって得体のしれない何かでしかなかった。最も、主人を助け、その上兵も貸してくれた恩人でもあった。
何の因果か輪廻か知らないが、無意識に彼女と同じことをした自分に、フィグネリアは戸惑うような表情を見せた。
今、その銀閃の風姫エレオノーラ=ヴィルターリアも、この娘の主、ティグルヴルムド=ヴォルンと同じく、今は捕虜の身の上だ。自分と同じようにティッタも心のどこかで心配してるのではないか?
いや、絶対にしているんだ。ただそれを、勇者という仮面で不安を隠しているに過ぎない。
そんなフィーネの推測を事実つけるかのように、この頃のティッタは明るく振る舞うことが多くなった。リムアリーシャにもティッタについて聞いてみたのだが、「寄せ付けない何か」があるように思え、どこか違和感さえあるとも言っていた。普段のティッタがティッタなのだから、なおの事ティッタを見ていてつらくなる――ということを。
(しっかり使命を果たすんだよ、ガイ。この子の……いや、ブリューヌの子供たちの本当の笑顔を取り戻せるのは、あんたしかいないんだから)
とは思いつつも、やはり自分も凱のところへ、今すぐ飛んでいきたい。自分も今隣を歩く侍女と同じなのだ。
――なんて、冷たいアルサスの風にたそがれていると、フィグネリアの耳に割り込む女性の声の存在が飛び込んできた。
荒風吹き乱れる今のブリューヌ情勢には似つかわしくない儚げな声。
どこともしれない声にティッタとフィーネの二人はあたりを見回す。
「あの『乱刃の華姫』が随分としおらしくなりましたね。これもガイの影響でしょうか」
「誰だ!?――――あ!お前は!?」
突如吹かれる別空間の圧力。
背後に気配を感じ取り、すかさずティッタを庇う恰好で身構え振り返ると、そこには見覚えのある姫君の姿があった。
薔薇の装飾を儚げに身に着け、その風貌に相反する大鎌が同時に出現する。
何にもない空間から大鎌の切っ先が空間を切り裂いて、彼の戦姫は現れた。
「アルサスへ訪れるのはお久しぶりですね。お元気そうで何よりです。フィグネリア」
「……ジスタートの誇る七戦姫の一人、ヴァレンティナか」
目の前にたたずむのは、ヴァレンティナ=グリンカ=エステス。
虚影の幻姫とも、鎌の舞姫とも呼ばれる、オステローデ公国の主だった。
―――――◇◆◇―――――
初めてヴァレンティナの顔を見ることとなるティッタは、驚きを通り越してきょとんとした表
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