第26話『涙を勇気に変えて〜ティッタの選んだ道』
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て、みんなを励ましていかなきゃいけないんだ)
凛々しい姿からは『暁の騎士』とも、健気な表情からは『暁の巫女』とも、幾つもの呼び名が生まれており、今ではティッタを軽々しく呼び止めたりするものはいない。それがティッタにとっては寂しくなったりもする。
あたしはあたし。それは変わらない。なので今まで通りに接してくださいとお願いした時に、暖かい笑い声があたりに満ちたのはいい思い出だ。
なので、親睦という意味でも、護衛という意味でも、フィグネリアは程度を超えない範囲でティッタに付添うようにすると決めていた。
やがて二人は川辺に向かって歩いていく。かすかに手がかじかみ、ティッタは両手に息をはあと吹き付ける。
見かねたフィグネリアは、羽織っていた外套をティッタにかぶせる。首回りに断熱効果を持つ毛皮つきだ。あまりの暖かさに、ティッタは率直に礼を述べた。薄着になったフィグネリアの姿はやはり寒そうに見える。
申し訳なく思ったティッタは声をかけた。
「フィグネリアさんは寒くないのですか?」
「これくらい平気だ。ジスタートの冬はもっと厳しいからな。それに――」
「それに?」
冗談気味に笑い、フィグネリアは空を見上げる。
「あいつだって……ガイだって頑張ってるんだ。私たちも寒さなんかに負けてられないな」
もう一人の勇者、今は『銀閃の勇者・シルヴレイブ』の二つ名を与えられた青年は、遥か東の地へ飛び立っていた。
陸地という地熱から離れている以上、遥か上空を航行している凱のほうが遥かに寒いだろう。いや、寒いという言葉ですら生ぬるい。極寒に加え、ナイフのような鋭さを持つ大気圧が、容赦なく凱の全身を縄のように縛り上げているはずだ。
「でも不思議です」
「何がだ?」
「以前、エレオノーラ様にもこうして付添っていただいたことがあったんです。その時、寒がっている私を見て、今みたいに外套をかぶせてくれたんですよ」
「――――そうなのか」
かつて、ティグル在中の『銀の流星軍』はテリトアールに布陣し、ブリューヌ領内の第三勢力として構えていた時の事だった。アルサス圏外の混合軍という環境の中で、ティッタはエレンから「一人で出歩かないように」と通告されたことがある。戦姫という立場のあるエレンや、その副官であるリムならともかく、ティッタのような一侍女にすぎない女性は、男ばかりの兵にとってある意味では『的』であった。実際に何度も声を掛けられて、ティッタは困惑したものだ。
(この娘……ティッタには何の悪気もないのだがな)
もちろん、ティッタにはエレンとフィグネリア……フィーネの確執を知らない。それが余計にフィーネの感情を複雑にかき混ぜるのであった。
ティッタに悟られないよう、普段見せない苦笑いでやり過ごすフィーネ。
こんな予想
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