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ある晴れた日に
107部分:谷に走り山に走りその三
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谷に走り山に走りその三

「だからなのよ」
「御前結構細かいんだな」
「そういうところまで見ているのかよ」
「当たり前よ」
 続いてやって来た坪本と佐々に対しても告げるのだった。
「だってね」
「だって?」
「何かあんのか?」
「砂時計ないじゃない」
 何故かここでは砂時計を話に出してきた。
「砂時計が」
「砂時計!?」
「何でここで出て来るんだ!?話に」
 二人だけでなく今ここにいる全員が静華の言葉に目を顰めさせた。彼女と付き合いの長い未晴達以外は。
「だから。ここじゃリュックとかに入れても箱とかに入れない限り割れるから」
「まあ衝撃とかでな」
「あんなのリュックの中で割ったら悲惨だぜ」
 砂だけでなくガラスの破片までリュックの中に散乱する。これ以上はない程悲惨であるのは間違いない。
「けれどよ。それでも」
「何で砂時計なんだよ」
「それがないからデジタルにこだわるってな」
「何かあんのか?」
「カップ麺よ」
 静華はここで言い切ってきた。
「カップ麺を作るのに必要じゃない」
「カップ麺!?」
「何だそりゃ」
 今度声をあげたのは野茂と坂上だった。彼等も集まってきていた。
「面白そうな話してるって思ったらよ」
「カップ麺って何なんだよ」
「こっちにも持って来たのよ」
 驚く面々をよそに平然とした調子で話す静華だった。やはり春華や未晴達は落ち着いている。まるで彼女が何を言いたいのか完全にわかっているように。
「お昼にね」
「お昼ってお握り貰ったじゃねえか」
「そうだよ、あの馬鹿でかいの」
 学校側が生徒達に配ったお昼は壮絶なものだった。直径二十センチ近い海苔に巻かれた巨大おむすびである。その中には梅だの昆布だのおかかだの色々と入っている。とりあえずこれだけ食べれば満腹だろうというとんでもない代物を配ったのである。考えたのは学年主任だ。
「あれだけじゃなくカップ麺もかよ」
「御前どれだけ食うんだよ」
「そういうあんた達は二個ずつ食べてたじゃない」
 横から咲が二人に突っ込みを入れてきた。彼女も登場だった。
「あんなの。二個も」
「まあ。貰えるっていうんならよ」
「おにぎり好きだしな」
 日本人のソウルフードである。嫌いな人間もまずいない。
「だからよ」
「それでな」
「私一個だったし。けれど一個だともうちょっとって思ったから」
 こう言う静華だった。
「だから魔法瓶に入れた御湯でね。三分」
「それでか」
「だからデジタルだったのかよ」
「三分きっちりじゃないと嫌だから」
 静華はさらに言ってきた。
「だから。未晴に借りたのよ」
「やっとわかったぜ」
「全く」
 皆それを聞いてようやく納得した顔で頷くのだった。
「それでか。時計借りたのは」

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