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ある晴れた日に
104部分:小さな橋の上でその二十
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小さな橋の上でその二十

「これってスーパーで売ってるやつじゃねえよな」
「お菓子屋さんで作ってるの?」
 加山も食べながら未晴に尋ねた。
「これって」
「そうよ。山月堂」
「またそこかよ」
 思わず呆れた声を出してしまった正道だった。
「柳本の彼氏の家って何処にでも出て来るな」
「だって美味しいし」
 その山月堂からケーキを仕入れている家の人間の言葉だ。
「しかも安いし」
「それかよ」
「だからよ。うちだって契約取るのに苦労したんだよ」
「どう苦労したんだ?」
「あそこの親父さん中日ファンだから」
 しかもまた野球が出て来るのだった。
「だから。ちょっとね」
「名古屋ドームのチケットでも手配したのかよ」
「杉下茂さんのサイン貰ったんだって」
 元祖フォークボールと謳われている伝説の大投手である。中日の最初の日本一を掴み取ってもいる。なおフォークはここぞという時の切り札だった。
「それで契約取ったらしいわ」
「高いのか安いのかわからねえな、その苦労って」
 正道はそこまで聞いて首を傾げるのだった。
「っていうかそれで終わりかよ」
「そう、それだけ」
「意外と気前がいいのか?あそこの親父さん」
「少なくとも飴は美味いぜ」
 商売とは関係ない野本は飴に専念していた。実に美味そうにしゃぶっている。
「これはよ」
「これ食べたらまた次ね」
 未晴はその飴を楽しむ皆にこう言うのだった。
「そういうことでね」
「ああ、そうだな」
 正道が彼女の言葉に頷く。山の中でのほんの楽しい一時だ。だがそれも。
「ねえ」
「どうしたよ、少年」
 明日夢が突然声をあげて野本がそれに応える。
「あとどれ位かしら」
「もう少しだよ」
 その彼女に加山が答えた。
「次の謎々までね」
「そうじゃなくてよ」
 明日夢は言うのである。
「全体で。どの位かしら」
「全体!?」
「謎々は全部で二十一だったわよね」
「そうだよ」
 今度は加山が彼女に対して答えてきた。
「全部でね」
「どれ位終わったの?」
 謎々を実質的に一人で担当している加山が出て来たところで彼に対して問う。なお彼女にしろ正道達にしろ謎々には今のところ全く携わっていない。はっきり言っているだけである。
「今のところ」
「今で八つだよ」
「八つなの」
「時間は今十時半」
「早いのかしら」
「どうかしらね」
 明日夢の言葉に首を捻る奈々瀬だった。首を捻りながらまだ飴をしゃぶっている。
「そこのところは」
「早いんじゃないの?」
「十時半で八つよね」
 奈々瀬は時間と解いた謎々を重ね合わせてきた。
「八つっていうと」
「微妙なのかしら」
「遅いかも」
 奈々瀬は今度はこう言った。
「ひょっとして」

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